第8話 パリの空港で

パリの空港の話になったから思い出したけど、、

ちょっと有り得ない経験をしたことがある。


2015年はパリにとって受難の年だった。

年明け早々に11区の週刊誌本社が襲撃され、風刺漫画家が何人も亡くなった。

この前後何年間かはイスラム過激派のテロの嵐が吹き荒れ、世界を震撼させる。


そんな中、女三人がお気楽にフランス旅行に出かけたのは6月のことだった。

結構緻密に計画を立てる私が有り得ない程のトラブルに見舞われることになる。

ケガをするわ、行き先を間違えて列車に乗るわで、もう大変、、

それでもパリを自転車で巡り、パサージュも歩いた。

アルザスの木組みの家(コロンバージュ)の可愛い村にも泊まった。

小さなホテルで何枚クレカを出しても読み取らないなんて可愛いトラブルさっ!


そんなこんなもありながら、やっとこさ無事パリの空港にたどり着いた。

後は帰国するのみと、現地在住の友人男性と4人で時間までカフェでゆっくり。

そんな中、私は出し損ねたポストカードのために切手を買いに行く。

現地友人が念のためとついて来てくれる。


歩きながら、何だよ、やけに小銃持った奴らが多いじゃないかと思う。

実のところ、この何年かパリではこういう軍人はありふれた光景だった。

それにしても多いな、、

カフェとは反対方向の土産店で無事切手を手に入れ、投函も済ませる。


さあカフェに戻ろうと歩き出した私たちの目の前で異変が起きた。

何人もの軍人が空港にいた大勢の人を中央から遠ざけ始めたのだ。

どんどん、どんどん、中央には大きな空間ができ、封鎖状態となる。

気がついたら、私たちはカフェとは引き離され、戻れなくなっていた。


ここで、現地友人は軍人相手に事情を説明し、通してもらおうとする。

一瞬行っても良いような雰囲気になったのに、上官がだめだと言った。

ここからは現地友人がどんなに捲し立てても、だめの一点張り。

現地友人、頑張ったと思う。

私も何かやったらんとあかんという気持ちにかられる。


そこで、私はカフェの方を指差し大きな声で叫んだ。

「モナミ エ ラァ!!」(友だち、あっちにいてんねん!)


気がつくと、現地友人が私を急かしていた。

えっ? えっ? 通ってもええん? ええっ?


どんだけ女に甘いのよ、、


二人でひらけた空間を走った。

向こうに友人の顔が見える。

とつ国で離れ離れにならずに済んだ!(置いて来た荷物とも‥)


そうほっとした私に、頭花畑の友人が目をハートにして言った。

「誰もいないとこ、二人が走って来て、まるで映画みたいやったわぁ」

いやや〜、こんなオッサンと映画みたいとか、いやや〜


後年、あれは女に甘かったのかどうなのか悩む。

ただただ恋に弱かったりして? モナミには恋人という意味もあるから。

フランス人の思考回路よく分からん。

何があってあの封鎖が起きたのかよりも疑問だ。



この後、実はチェックインするにはまた反対に戻る必要があった、とか、、

よくわからない地下を彷徨って戻った、とか、、

ほっとした私がいつもに似合わず、時間チェックが疎かになり、、

買い物に奔走する友人を制御できず、時間ギリギリになり、、

悪いことに搭乗ゲートが急遽変更されていて、、

走ったけど、2〜3分差で乗り遅れたり、とか、、乗り遅れたりとか、、グスン

その後、予約の取り直しも大変だったり、とか、、

(仁川経由の便を取ってくれたお兄さんと思わず握手し、手をなでてしもた)

まだまだ、…とか、、…とか、、

史上稀に見るトラブル満載の旅行だった。



この5ヶ月後、パリは同時多発テロにみまわれる。

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