第6話 嫉妬と不安

「どなたですか」

「俺、隆」

 勢い良く開けられたドアに隆は顔を殴られそうになった。

「隆くん」

 美子が飛びついてきた。

「来ないかと思った」


 涙でぼろぼろの顔で美子は唇を求めてきた。昨日が初めてのキス今日で二回目、昨日と違い今日は本当にキスだった。

「来ないわけないでしょ」

 隆は美子の頭を撫でた。

「信じてはいたけど、このまま来なかったらどうしようかって、隆くん、立石先輩も好きでしょ」

 思わず隆はむせかけた。


「もって何、嫌いじゃないけど、美子ちゃんが一番だよ」

「ありがとう、って言いたいけど、一番なの?じゃ二番は」

 美子は笑顔だが、目は笑っていない。

「冗談だよ、でも、昨日の藤野先生、なんかおかしかったなあ」


美子は、そのクリクリの瞳で隆を見据えた。

「SEXしてるよね先生と。隠さないで。隆くんかっこいいもの仕方がないよ」

「俺かっこいいか、美子ちゃんおかしくない」

 話を変えようとするのは、肯定したのも同じだ。

「うーん、なんていうかカッコいい、大人だし」

「ありがとう」

「それってSEXしたことあるからだよね」


 どうしてそこから離れない。

「私もしてほしい。誰にも負けたくない、隆くんに愛してほしい」

 美子は隆の手を引くと、階段を二階に上がった。

 美子の部屋は、思ったより殺風景だった。

 譜面立てが机の横に置いてあるのが、美子らしいと言えば美子らしい。

 部屋に入るなり、美子は制服のスカートを足元に落とした。赤いネクタイを外しカッターシャツも脱ぐ。


 固まったように動けない隆をしり目に、美子は、ベッドに横たわると、両手で顔を覆った。

 隆は、美子の手をどけ唇を重ねた。正直悩んでいる、でも何もしないで帰れそうにもなかった。帰った後の美子が不安だったのだ。

 胸に触れると、美子の体がガタガタ震えだした。

 手をおなかに滑らすと、ひくひくと泣きだした。


「美子」

「だ、だいじょうぶだから、して」

「ね、まだ早いって。こんなことしなくても、俺は美子のこと好きだから」

 航は美子の体を抱きしめた。

「私のこと嫌いじゃないよね」

「あたりまえ、もう少し大きくなったら、ちゃんとしよ。美子の最初は俺のものだから」


 美子は隆を抱きしめた。隆も美子の背中に手を回した素肌の背中が熱い。どれくらいそのままだったのだろう、美子の呼吸が落ち着いてきた。

「ね、お母さんとお父さんは」

「今日二人でデート、九時過ぎには帰ってくる」

 九時過ぎ 隆は慌ててベッドから飛び起きた。あと三十分もなかった。

よかった、美子としていたら絶対親と鉢合わせだったはずだ。

 隆は、玄関先でもう一度美子とキスをすると自転車に乗った。

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