第2話 膝枕で耳かきですよ、先輩
「では先輩。お布団にごろーん♪」
「ここが先輩のいつも寝てるお布団なんですねー」
「なんか先輩の匂いがする……かも……」
「えへへ。変態っぽいですかね」
「これからどうするのか、って?」
「ふっふっふ……。ご心配なく」
「これですよ!」
「先輩んちのリビングの引き出しから拝借した竹耳かき!」
「勝手に……は取りましたけどー」
「まぁ先輩。聞いてください」
「取ってなかったらまた先輩に立ってもらって、耳かきまで案内してもらって、それでまたここにごろんするんですよ」
「この歩く時間を短縮したんです」
「そして15分温めた物がこちら! ってやつと一緒です」
「先回りもできる後輩ちゃんなんですよ」
「では先輩。右耳の方を上にしてください」
「そうです」
「で、少し頭の上を空けてもらえますか? ちょっと頭を持ち上げてもらって……」
//SE ベッドに座る音。(布の擦れる音)
「はい、ではどーぞ」
「……先輩?」
「頭、下ろさないんですか?」
「そーですよ。かわいくて優しい後輩の膝枕です」
「え、だって耳かきと膝枕ってセットじゃないですか」
「当然ですよ」
「だから耳かきをするなら膝枕もついてくるんです」
「ほらほら~せんぱ~い。頭下ろしちゃえ~♪ 無駄な抵抗はよすのだ~♪」
「む。強情ですね……」
「一応、言っておきますとですね」
「ウチはまったく嫌じゃないので、逃げる必要ないですよ」
「とーぜん、嫌だったらやらないですし……」
「むしろ……やってみたい……というか」
「……最近、通話するたびに先輩の元気がなくなってるじゃないですか?」
「なんかこのまま行ったら先輩やばいなー……とか思って」
「なので少しでも先輩が癒されてくれたらいいな……と、思ってるので」
「遠慮されたら逆にちょっと困るという……」
「わ」
「先輩の頭だ……」
「いや、すみません。変な感想でちゃった」
「……はい。ありがとうございます」
「えーと、よくできました先輩。えらい、えらい。よしよし」
「……えへへ」
「……耳かき、していきますね」
「竹耳かきでお掃除して、その後、後ろについてる梵天で綺麗にします」
「先輩は全身の力を抜いて、ゆるーっとした気持ちでいてください」
「む。まだ緊張してないですか?」
「深呼吸とかしましょうか」
「ではせんぱーい。息をー……吸ってー……すーっ」
「吐いてー……はーっ」
「吸って……すー……」
「吐いてー……はー……っ」
「リラックスですよー」
「まずはお耳の浅いところからやっていきますね」
「痛かったら言ってくださいね?」
「かり……かり……かり……」
「ふふ、先輩目細めてますね」
「ちょっとくすぐったそー」
「優しく……ゆっくりやりますね」
「気持ちいいですか?」
「そですか」
「かり……かり……」
「ちょっと慣れてきましたかね」
「もう少し奥もやりますね」
「そーっと。……この辺までは平気かな」
「ごそ……ごそ……」
「先輩、目閉じててもいいですよ」
「なんかもう、とろんとしてますし」
「奥、大丈夫ですか? 痛いとか」
「そですか。じゃー続けますねー」
「ごそ……ごそ……。ん〜……」
「息、ふーってしますね」
「ふー…………っ」
「ふふ。ぴくってしましたね」
「ん……お耳は……よし」
「綺麗になりました」
「では反対のお耳です。先輩ごろーん♪」
「わー、先輩が太ももでもぞもぞしてる」
「えへへ。いいですよ、別に」
「ちなみにウチの太ももはどうですか?」
「……まぁ、顔見ればわかりますけどね」
「ちなみに、言ってくれれば、何回でもやってあげますからね。膝枕」
「あ、言われなくてもやりますよ? もちろん」
「では次は左耳です」
「また浅いところからゆっくりやってきますね」
「体の力も抜くんですよー」
「お耳をー……かり、かり……」
「んしょ……。もうちょっと奥もやりますね」
「あ、さっきので慣れてきたかも」
「ごしょごしょ……。んー……」
「また、ふーってしますよ」
「ふーー……っ」
「……んー」
「もうちょっとやりますねー……」
「ごそ……ごそ……」
「…………」(ゆっくり目の呼吸音)
「ん。よし。おっけーかな……」
「おしまいですよ、先輩」
「……せんぱーい?」
「……あ」
「寝ちゃってる……?」
「……どーしよー。これ」
「……でもなんか、ぐっすりだし」
「足が痺れるくらいまでは、このままにしてあげよっかな」
「ゆっくり寝てくださいね。先輩」
「おやすみなさい」
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