第3話 朝ご飯、作っておきましたよ

//SE とん、とん、という包丁の音。じゅー、というフライパンで熱する音。



「あ、先輩だー」

「おはよーございます。よく寝れましたー?」



「……そーですよー?」

「先輩がウチのうららかな太ももの上でぐっすり寝ちゃうからー」

「しかもウチがどいても起きないし」

「起こすのも申し訳ないなー、ってくらい気持ち良さそーに寝てたし」

「なのでそのまま寝かせちゃいました」



「でも……まぁ」

「そのおかげか、ちょっとすっきりした顔してますね」

「よく眠れたっぽいですか?」

「これからもちゃんと寝るんですよー?」



「あ、ウチですか?」

「ウチは見ての通り……朝ご飯、作ってます」

「先輩ってたしか苦手なものとか無かったですよね?」

「あ、そーです。おにぎりと、卵焼きと、ソーセージです」



「冷蔵庫パッと見て……ご飯勝手に炊いちゃったのと……卵とソーセージも、賞味期限切れそうだったので勝手に貰っちゃいました。すみません」

「あ、平気ですか? よかったー」



「お味噌汁はインスタントですよ」

「準備してなかったので、これで我慢してください」

「だから今日は『この味噌汁を毎日作ってくれー』とか言っちゃだめですよ? 企業の人が喜ぶだけですから」



「じゃ、先輩はそこ座っててください」

「大丈夫ですよ。もうできるので」

「食器も借りちゃいますね」

「先輩、麦茶でいいですか?」



//SE テーブルに料理を並べていく音



「……はい」

「準備できました」

「えっと、どーぞ」

「な、なんかそんな、期待しないでくださいね? あり合わせで作っただけですし」

「先輩のことだからどーせ朝ご飯抜いたりしてるんだろうなーと思って」



「……嬉しい、ですか?」

「……な、なるほど」

「……ええと、なんかもにゃりますね。そう言ってもらえるとウチも嬉しいというか、作った甲斐があるというか……」



「と、とりあえず食べましょうか!」

「いただきます!」



//SE 食器の音。(テーブルからお椀を取る。箸を擦らせる。)



「……えへへ」

「いや、なんか先輩、染みるーって顔してるなと思って」

「美味しかったですか?」

「……良かったぁ」

「ちゃんとご飯も食べてからじゃないと、お昼も元気出ないですからね」



「先輩ちなみに、帰ってから食べたいものとかあります?」

「……え? まだいるつもりなの……って、そりゃーもちろん」

「先輩がこーんなにお疲れなのに、それを放って帰る後輩じゃないですよ?」

「元気になった? いえいえまだまだ!」

「その顔で何を言うんですか」

「少なくとも顔の疲れが無くなるまではお世話させてもらいますから」



「でももし……それでも帰れと言うのなら……」

「昨日先輩がウチの太ももで爆睡してる寝顔を、SNSに投稿します」

「その後、先輩のお母さんにもこの写真を送ります」



「ふっふっふ……なんとでも言ってください!」

「ちゃんと目元に黒い線は引いておきますからね」

「あ~どんなメッセージ付けよっかなあ~。『赤ちゃん(笑)』とかにしよっかなあ~」



「……はい。よろしい」

「ちなみにウチはまだ学生ですし、時間もあるので。負担もそんなに無いですよ」

「やりたくてやってるわけですし」



「なので先輩は観念して、ウチにお世話されてください」

「……はい♪」



「じゃあご飯食べちゃいましょうか」

「早く起きたのはいいですけど、遅れたらだめですもんね」



「ちなみに……」

「帰ったらウチがいーっぱい、甘やかしてあげますから」

「楽しみにしててくださいね♪」


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