第11話 不協和音

「見させてもらいますよ。君の記憶。記憶海。」


 青く深い海に沈んでいく。泡の中で映像が流れている。パチンと割れば大きなスクリーンに映される。


「へ〜君の身体能力凄いんですね。セラスさんを押さえ込むなんて。」


「君のその体、気になりますね。まるでキメラみたい。でも確率は低いかもしれませんけど、自然に出来る可能性はありますからね。」


「エラルドさん何処にいたんですか。気配消すの上手すぎですよ。」


「わぁ、エラルドさん優しい方だと思ったら、結構裏黒いですね。性格変わりすぎでしょ。」


「エラルドさんと一緒にいたなら、その時の記憶は何処かな。」


「これかな〜見させて貰いますよ。」


「エラルドさん昔から戦いの時は怖い人なんですね。裏切り者が例え仲良くても無表情で殺すなんて。」


「兄さん…いるんですね。よく似ています。」


「あれ?記憶に靄が…」


「これはエラルドさんに会う前?」


PJプロジェクト『異質同体戦闘員』?」


「昨日の実験と同じ様なことしていますね。と言うより昨日より酷い様な…」


「うわー結構やばい事しますね……えっ…なんで…」


「待ってこの記憶の研究所はどこだ!」


「探さないと。助けないと。」


「何でない!記憶の改竄?記憶喪失?靄のせいで見えない。もしかして彼女が…」


「あった!研究所名____。此処にレナが。レナが居る!」


「早く行かないと。早く早く。」


 記憶の海から浮上すると、急いで鞄に武器を詰めて、急足で石畳み作りの拷問室から出て行った。





 コツンコツン


 小さく靴の鳴る音がする。


「計画は成功したみたいだね。恋は盲目。まぁこれは恋じゃないけど、大切な人が酷い目に遭っていたら、見えている物も見えなくなるよね。次の計画を実行しないと。」


 独り言を呟くと軽い靴音を鳴らして来た道を引き返していった。





「報告します。今回敵と戦闘が起こりましたが、無事生存、そして捕虜にする事が出来ました。」


「かなりいい成果だ。」


「ありがとうございます。ただ問題が。」


「それは?」


「エラルド=フォリアには裏がありそうです。元仲間にも無情で攻撃していました。」


「そうか、でもそう教えられていたら、あんまり裏とは言えないな。二面性のある奴なんかこの世界には山ほどいるからな。まぁ様子を見とけ。」


「かしこまりました。それでは失礼します。」


 開かれた扉が閉まると執務室に静寂が漂った。


「不思議な奴だな。蝙蝠の能力を持った人間。何かしら裏はあるだろうが、奴の弟だ。そこまで心配する必要はないだろ。何かあれば俺が手を下すだけだ。」





「やっぱりあそこには居なかったか。まぁそうだよね。あんな所にいたら名折れだもんね。あの人に調べて貰ったけど、大した情報は無かったな。でも素晴らしい能力だよね。今後も動いて貰わないと。」


 ゆっくり回すグラスには血の様な赤い紅いワインが踊っていた。





 それぞれの思考が交差し絡み合う。


 鍵となる物は…


 PJプロジェクト『異質同体戦闘員』

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