第4話 天才エルフ
「あぁ… 今後もあの人と…」
今後の絶望的な未来に溺れかけながら2階にある目的の扉までゆっくりと歩いた。
「此処かな。」
此処に来るまでに見た扉は茶色系の色だったが、この扉だけは水色なのに少し疑問に思いながら、特別な人なのかもと自分の中で勝手に結論を出し、扉をノックした。
「すみません、今日から一緒に働かせていただきます、エラルド=フォリアです。」
「あっやっと来た〜!今から開けますね〜」
とても明るく元気な声が聞こえると、ガチャリと扉が開き、長く尖った耳が特徴の水色髪の女性が出てきた。女性は白と金を基調とした神官の服を身に纏っていた。女性に誘われるままに中に入ると神秘的な森が広がっていた。
「凄い…」
「でしょ!」
エラルドが零した言葉に女は自慢げに胸を張り笑みを浮かべた。
「自己紹介していなかったね。初めましてアリア=メールって言います。よろしくお願いします。一緒に頑張りましょうね!」
アリアは両手でガッツポーズをして、元気よく言った。
「はい!それにしてもここも空間拡張でしているんですか?」
「違うよ。此処は実際にある場所に転移しているだけ。空間拡張は別の部屋だよ。」
「そうなんですか!?」
転移魔術は空間拡張と同等、いやそれ以上の高等技術だ。推測だが此処はエルフの森だと思う。そう考えるとこのビルからエルフの森までは何千キロも離れている。それを経由無しで直で行こうとすると技術が必要になる。空間拡張の倍以上の技術力、しかも転移には身体的負担がかかるが殆ど無いと言うことは、世界最高峰の技術を持つエルフが作ったことになる。
技術の高さに驚嘆していると、アリアはさっき入ってきた扉をもう一度開けた。そこに広がっていたのはさっき居た廊下ではなく、緑に囲まれた部屋だった。
「此処が私の部屋だよ。こっちは空間拡張で作った部屋だよ。」
エラルドは驚きと不思議とで頭の中がぐるぐると渦巻いていた。
「あれ? 部屋? 何で? 廊下じゃないんですか?」
どんどん疑問と??が浮かび上がってくる。
「ふふふっ♪凄いでしょ!私の魔術!」
“私の魔術”?
「えっ!これ1人で作ったんですか!?」
「うん!そうだよ〜」
凄すぎる…まさか自分の目の前に世界最高峰の技術を持つ魔術師がいるなんて!
「何で廊下に繋がらないのかは、この扉に秘密があるんだ〜」
そう言いながらアリアは扉に近づき、ドアノブを“右”に捻った。すると繋がったのは最初にいた廊下だった。そして扉を閉めると今度は“左”に捻った。繋がっていたのはさっき居た神秘的な森だった。
「この部屋の場合は右が廊下で左が森。」
開けた扉から森に行き、また扉を開く。
「森の場合は右が部屋で左が廊下。」
次は開けた扉から廊下に行き、また扉を開く。
「廊下は右が森で左が部屋。こんな感じで繋がっているんだ〜!」
簡単に言えば三角形状に繋がっていると言うことだ。
「もしかして、このビルの空間拡張もアリアさんがしたんですか?」
「そうだよ、全部みんなの意見とかに合わせて作っているんだ。」
「凄すぎます…」
「今度エラルド君にも作ってあげるからね。」
「ありがとうございます!」
「それじゃあそろそろ時間だから、一緒に行こうか。」
「何処へですか?」
「ん〜それは秘密☆」
「そうですか。」
エラルドはそう言うと、ウィンクをして誤魔化すアリアさんのあとをついていった。
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