第2話 気まぐれな猫
部屋を出ると、来た道を戻っていく。そろそろ最初の入り口に着きそうとなった時、先ほどまで歩いていた廊下に誰かの気配を感じ、首だけ動かしてその方向を見た。だけど、そこには人影はなく気配だけがあった。
「あれ? 誰かいる?」
呟きを零しながら気配がした方に行こうと体の向きを変えた瞬間、パッと気配が消え、この場から一切感じ取れなくなった。
「消えた……」
何処から来るのか警戒すると、「にゃ〜ん」と猫の鳴き声が右から聞こえて振り向くが誰もいなく、何だったんだと思えば「そっちじゃないにゃ♪」と誰かの声が次は左から聞こえた。次は左に振り向けばそこには、キャラメル色の髪に同じ色のふわふわな耳をピンっと立てている女の子がいた。真っ白な長袖のフリルシャツに膝上ぐらいの丈のコルク色のサスペンダースカート。リボンが付いた茶色のローファーを履き、首には鳴らない鈴の付いたチョーカーを付けている。
「君が新人かにゃ。僕はメオ=リデルテだにゃ! よろしくにゃ〜 撫でられるの好きなんだにゃ。だから優しく撫でてくれると嬉しいにゃ♪」
メオは驚いているエラルドのことはお構いなしに両手でエラルドの右手を掴むと思いっきり上下に振り、楽しげに尻尾を揺らした。
「初めましてエラルド=フォリアって言います。よろしくお願いします。」
紳士的な笑みを浮かべながらされるがままに腕を振られていると、何かを思い出したのかメオは「あっ!」と声を上げた。
「ラル君はアリアの所に行くつもりなんだよね?」
「はい、そうです。それで、そのラル君って?」
今まで呼ばれたことのない呼び方に戸惑って聞くとメオは不安そうに瞳を揺らし、耳はぺたりと畳み、ゆらゆら揺れていた尻尾は動かず下がっていた。
「あの、嫌だった…? エラルド君って言いづらいから、ラル君って呼んじゃったけど…」
「いや、全然。初めての呼ばれ方だったから驚いちゃっただけ。大丈夫だよ、メオ。」
優しく頭を撫でながら言うと段々耳と尻尾が立ち、嬉しそうに微笑んだ。
「そうなの。嬉しい〜 ラル君って呼ぶの僕が初めてなんだ! ふふふっ♪」
「それじゃあ、アリアさんの所に行かないといけないから、またね。」
メオに別れを告げるとエラルドは玄関ホールへと進んだ。
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