第58話【配信】汚染の中心にあるものは…
「ねぇアロン…あそこじゃないかな?」
『そうかも知れません…流石にあの赤い液体に触れながら着陸するのは辞めておきましょう。毒性などはありませんが、気をつけるべきかと…』
「そうだね…それじゃあ空中で観察しよう。ちなみに何だけど…あれって何か分かるかな?」
俺は一時的に配信をしている最中のカメラをカバンの中に入れて、作業に集中することにした。とにかくまずは汚染の中心を壊すなり何なりして、安全に作業をする事の出来る環境を作ろう…
アロンと一緒に汚染の中心にある物体を見つけるため、周囲に塩酸をまいてみることにした。結果からいうと、大成功で汚染の中心になっている物体を視認することが出来た。
「あれは…本なのか?」
『もしかすると、あれが汚染の原因なのかもしれません。一度手にとって回収するのは待って様子を見てみませんか?』
「様子を見るなら先に手にとって回収するほうが良いんじゃないか?」
『もしその本がトラップだとしたら、主様が大変な目にあってしまいます。なので最悪は私から触ります。』
「…わかった。とりあえず一度放置するって方向でいいかい?」
『それでいいと思います。経過は私が観察しておくのでスマホでいつでも連絡がつくようにしておいてください。一度範囲外に送りますので、そこで昼食を取っておいてください。』
「ありがとうね。でもアロンは休まなくても大丈夫なのか?いくらゴーレムと言えど疲れとか感じないわけじゃないだろう?」
『ゴーレムですので、疲労という概念はありませんよ。強いて言うなら、作業することがないので若干退屈することくらいですかね…』
「退屈とかで済むんだ…まぁ良いや。流石に俺だけが食事をとる訳にはいかないから、アロンのためにこれをあげるよ。」
『これは…?』
「これは前に買ったやつなんだけど、これをテイムしているモンスターに与えると能力が強化されたりするらしいから使ってみて?」
『ありがとうございます主様!!大切に使いますね!!』
「それは大切に使わなくて大丈夫だよ…すぐに使ってもいいし、少し時間が経ってからでも良いよ。」
『それじゃあすぐに使わせていただきます。…とその前に先に範囲外に行きましょう。』
アロンは俺のことを連れてこの血の範囲の外に行ってくれた。そして俺に向かって追加で話しかけてきた。
『それと主様!!くれぐれもこの液体には触れないでくださいね?』
「分かってるよ。こんな物に触れたくないからね…とりあえず後で合流しよう!!」
『はい!!それではまた後で!!』
俺とアロンが別れてから、昼食を取り始めた後カメラを確認してみた。すると既に配信を見ている人数が数十万人に上っていたのだ。
「ん〜急にこんなに増えて…どういうことなんだ?」
コメント欄を確認する余裕は殆どない。というかコメントを見ることはほとんど不可能だった。
「コメントの流れが早すぎるよ…もう殆ど何も見えないじゃん…」
昼食を取りながら配信を続けていると、周囲の雰囲気が一気に変わった気がした。
「…何かが来た?」
俺はカメラをすぐにまたカバンに入れると、カバンをその場に放り投げて周囲に警戒を向けた。
こちらに迫ってくるのが何なのか…それを確認しなくちゃいけない。
「くっそ…配信なのに映像を見せることが出来ないじゃないか…どうすれば良いんだ。」
自分の身が一番大事だけど…それ以上にアロンの方も心配だ。もし俺の方に敵が来ているなら、アロンの方にも敵が来ているかもしれない…
お互いに視認が出来ていない状況だから、指示も出せない…つまりもし本当に強い敵が来たら協力して戦わないと俺は…
「死んでしまうかもしれないな…まぁ近づいてきているのが敵だった場合だけどな。」
もし敵だったら気をつけなければ…それにアロンともなるべく早く合流しなければ!!
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