第134話 リオとのデート

ケイトとリオは2人で城下町へ出かけてる。


「リオはどこか行きたい所はあるか?」


「へ、うん、ありがとう」


2人でのデートは初めてなので、リオは緊張して質問の返事を上手く返せていない。

ケイトは苦笑いしながら、リオに質問をし直す


「リオ、行きたい所がないならとりあえず食事所でも入ろうか?」


「あ、うん、ありがとう」


とりあえず、昼食前なので軽食も甘味もあるお店に入る事にする。

この辺りは、アリッサがリサーチして教えてくれて送り出してくれたのでありがたい。


アリッサやリュクスと何回かデートをしたが、それまでなんの経験も無かったケイトは、咄嗟に提案できる技量は備わっていない。


店に入って席に通されて、ケイトとリオは向かい合わせになって席についた。


「リオ、何を頼もうか?」


「え、うん……なによ」


リオは、突然笑い出したケイトに訝しげな反応を返した。


「だって、ずっとその反応だし、俺より緊張してるんだもん」


「なによ、だって、デートなんて初めてだし……ケイトも、緊張してるの?」


「そりゃもちろん、この世界に来て、この間までは彼女はもちろんデートもした事なかったんだ。数回した程度で慣れるわけないし、その、リオとは初めてのデートだしさ」


《デート》という言葉に反応して2人は同時に顔を赤くした。


「ねえ、私、ケイトの事あんまり知らないでしょ? せっかくだから、こっちに来る前、日本で何をしてたのか、教えてもらってもいい?」


リオの質問にケイトはむずかい顔をしながら頭をかいた。


「あー、いいけど、引かないか?」


「なによ、そんな引くような人だったの? 引かないから教えて欲しいな」


先程までの緊張した容姿はどこへやら。ケイトの困った様子を悪戯好きの小悪魔の様な笑みでリオは質問した。


「それなら、でも、面白い物じゃないぞ?」


「ええ。でも、ケイトの事がもっと知りたいのよ」


ケイトはこの世界に来るまでの、自分の人生をリオに語って聞かせた。


まずは、元の自分が30過ぎの太ったおじさんで、本来この世界に来るはずの学生を追い越した為にこっちにやって来たこと。


その前の、会社員の時は万年平社員で、後輩に先を越されて顎で使われるような人間であったという事。


学生時代は、女子に興味を持ちながらもオタク趣味で、話しかける勇気も無かった事など、こちらに来るまでの自分はパッとしない人間だったと話した。


「どうだ? 幻滅したか?」


ケイトは自分の事を話しながら、自分自身で酷いと思っていた。


ケイトの質問に、リオは首を横に振った。


「そうね、まさか30過ぎのおじさんだったとは驚いたわ」


首の振る方向と、言動が一致しない事にケイトは表情を固くしたが、リオの言葉には続きがあった。


「でも、私が今、妻でありたいと思っているのはその経験を積んできたケイトだわ。私達と同い年でこっちに来ていたらハシモト君の様に自分勝手に動いたり、子供っぽい行動をしてたかも知れないわ。私が信頼できた、ケイトの大人っぽさの秘密がわかったわ」


リオは言葉を言い切った後、自分の口から出た言葉の意味を理解して、恥ずかしそうに一気に水を飲み干した。


「じゃあ、次はリオのこっちに来る前の話を聞かせてよ」


ケイトも、言われた事を理解して、恥ずかしそうに話を逸らす為に今度はリオの話を質問した。


2人は、お互いの出会う前の話をする事で、これまでより仲を深めていくのであった。


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