第133話 お断り
アリッサと作戦会議の結果、リオはケイトをデートに誘った。
ケイトは翌日にリュクスと約束があったようだが、リオから誘ってくる事は珍しく、しかもその時のリオの雰囲気がいつもよりぐっと愛らしかったのもあって、リュクスに予定をずらすようにお願いしてリオを優先してくれた。
翌日のデートが決まった後に、リオはふと思い出した。
明日にハーバントとお茶の約束をしていた事を。
しかし、自分はケイトの妻なのだし、今日初めて会ったハーバントよりもケイトを優先するのは当たり前だ。
それに、ケイトがリュクスよりも自分を優先してくれたのだ。
それを考えると嬉しくなり、リオは鼻歌を歌いながらすぐさまハーバントに明日の予定の断りの手紙を書いて、城のメイドに渡してもらうように頼んだ。
そのリアからの断りの手紙を受け取ったハーバントは、王都のハーラック侯爵邸の自室にて手紙を読むと、怒りに肩を振るわせて手紙を地面に叩きつけた。
「俺様よりも小国の王を優先するだと! ふざけよって!」
予定を反故にされた事でプライドが傷つけられて騒ぐハーバントの声を聞きつけて、父親のオーガルトが部屋にやってきた。
ドアをノックして声をかけてきた父を部屋に招き入れて、事情を説明して、怒りが再度燃え上がったようで机に拳を叩きつけた。
「ふむ、なるほど。しかし、噂を流すにはちょうど良い材料が手に入ったのではないか?」
「どういうことですか?」
ハーバントは、父の言葉に質問をした。
「勇者リオはお前に手紙を送ってきたのだ。断りの手紙だとしても、それを知っている者はいない。ならば、お前から別の日にちに予定の変更を提案して茶会の事実さえ作ってしまえ。あとは噂を流せばよい。勇者リオとお前が文のやり取りをしている。いい雰囲気なのではないかとな。後はお前の腕の見せ所だぞ? 令嬢を何人か手篭めにしているのは知っているぞ。今回も上手くやれ」
オーガルトの話を聞いてハーバントはニヤリと笑った。
「なるほど、勇者の浮気の噂を流して小国の王に不信感を抱かせ、仲を引き裂くのですね。本来ならこちらからハニートラップを仕掛けて勇者にも不信感を抱かせるところですが、リュクスが上手い事動いてくれていますから、やりやすそうですね」
「これ、リュクス様、リュクス王太子閣下だ。今の所はな」
ハーラック公爵邸の一室では、怪しい親子の笑い声が響いていた。
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