第132話 庭

ある日、リオは1人でアクアリア城を歩いていた。


少し気まずくて、部屋から出て来たのだ。

アリッサやミステルト、ケイトと一緒に居たのだが、アリッサ達がケイトにリオを猛プッシュするので、女性経験の少ないケイトと、彼氏がいた事もないリオでは気まずい雰囲気が出てしまったのだ。


リオは、ケイトとのこれからを想像して、顔を赤くした。


妄想を振り払う為に頭を振って、熱った顔を冷やす為に中庭にやって来た。


中庭にあるベンチに腰掛けて、ぼうっと景色を見ていた。


周りの花の香りが、心を落ち着かせてくれる。


「とても綺麗な花達でしょう?」


ぼうっとしていたリオに、声をかけてくる人がいた。


「え?」


「これはいきなり失礼。私はハーバントと言います。庭に人が居たので声をかけてしまったのですよ。どうですか? 綺麗な花でしょう?」


声をかけて来た男性、ハーバントの質問に、リオは頷いた。


「そうですね。それに、とてもいい香りです」


ハーバントは笑って頷いた。


「お嬢さんの名前は?」


「あ、私はリオです」


「リオ。まさか勇者様ですか?」


ハーバントの驚いたような質問にリオはなんと言おうか悩んだ。


「まあ、元勇者が正しいですけどね」


苦笑いで答えたのは、勇者らしい事をした覚えがなかったからであった。


「勇者様は色々な冒険をして来たのでしょう? 私は剣術を学んだものの外に出た事がないとです。勇者様の冒険をお聞きしても?」


「まあ、はい。今はする事もありませんし」


「向こうにテラスがあります。そちに行きましょう」


リオは、ベンチに並んで座るよりは良いのかと思い、提案にのってテラスに移動をした。


リオは、ハーバントに冒険の話をした。


辛い話はしなくていいだろうと思い、面白おかしく話すように心がけた。


思い返すと、この世界に来てただの高校生であった自分がこの世界に順応して生きてこられたのは、スキルやステータスもあっただろうが、ケイトのアドバイスのおかげである事を再確認できた。


そうじゃなければ、異世界の事を何にも知らなかった自分はレミントの言う通りになって養殖になって危険な目に遭っていたかもしれないし、ハシモト君の思惑によってどんな事になっていたかも分からない。


話し出すと、冒険の話は思っていたよりも長くなってしまう。


「もうこんな時間ですか、続きはまた明日聞かせてもらってもよろしいですか?」


「え、あ、はい。明日も予定はありませんし」


「では、明日はお茶を用意してゆっくり聞きましょう。今日はありがとうございました」


そうして、リオとハーバントは別れて帰った。


ケイト達がいる部屋に戻ったリオは、ケイトを見て顔を赤くする。


先程昔を思い出した事で、自分は思っていた以上にケイトの事を好きなんだと理解していた。


「リオ、どこに行っていたのよ。作戦会議するわよ?」


「え?」


アリッサに別部屋に引きずられていく。


これからまたケイトとの初夜についての作戦会議が始まるのだが、これまでと違って、リオは満更でもない様子であった。

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