第131話 暗躍
ケイト達がアクアリア王国に来て数日。
ケイト達をきちんと国賓として扱う貴族がいる中、それに不満をもち、裏で何かを画策する貴族もいた。
「それで、説得はできたのか?」
「それが、面倒くさいと言って乗り気ではありませんのでデルガー様は無理でしょうな」
貴族達は、なんとか今の王権を覆して自分達の利を得ようと度々話し合いをしていた。
「皆さん、名案があります」
デルガーを祭り上げる案に行き詰まったところで、1人の貴族が手を挙げた。
「血筋で言えば、ケミルト様の血もオーガルト様の血も同じなのです。オーガルト・ハーラック公爵様のご子息、ハーバント様にアクアリアの勇者リオと結婚していただければ、王位を主張することも可能ではないでしょうか。王族の血と勇者の血を受け継ぐ子を次の王位につける為に、リュクス様には席を譲っていただくのです」
オーガルト・ハーラック公爵とは、アクアリア王ケミルトの弟である。
王族の血は継いでいる為、レミントが生まれるまでは王位継承権を所持していた。
いや、継承順位は低いが、今でも一応王位継承権は持っているし、その息子のハーバントもおなじである。
これは、戦争などでケミルトや、ケミルトの血を継ぐ王位継承権の順位が高い者が亡くなってしまった時の為に王の血、つまり、勇者の血筋を絶やさない為の処置である。
それ程までに、五大大国にとって勇者の血とは偉大であった。
アースランド王国は愚王を打った事によってその血筋が途絶えてしまっている為、その血を欲して他の五大大国に婚姻を申し込んだほどである。
「私達の派閥には一番の案かと思います。デルガー様は王位継承権を放棄なさるでしょうし、新しい勇者の血を王家に、アクアリア王国に取り込めるとなれば、リュクス様もお考えが変わるでしょう。いえ、変えてもらわなければいけません。アクアリア王国のために。そうでしょう? オーガルト様」
この派閥のトップはオーガルト・ハーラックである。つまり、この話はこの派閥にとってとても都合のいい話であった。
「悪くない。いや、いい考えである。しかし、勇者リオはケイト王の第三王妃であらせられる」
オーガルトは、一番の問題に苦い顔をした。
「あんな小国に気を使う必要はないでしょう。いや、そもそも、あんな小国の第三王妃に勇者様が嫁ぐなど、不敬でありましょう。我々は、本来あるべきアクアリア王国の正妃として迎え入れ、お助けするのです。 ご安心ください。メイドを使って調べた所、勇者リオはまだ生娘です」
「なるほど。たしかに勇者様を蔑ろにされていると言えばその通りであるな」
オーガルトの返答を聞いて、集まった貴族達は、この案に乗って王権を奪う為に動き始める。
「早くお助けせねば、勇者様が汚されてしまうかもしれませんからね」
方向性の決まった話し合いは、盛り上がり、案が練られていくのであった。
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