第122話 招集
その日、ウィンダム王立学園がざわつく出来事が起こった。
国王であるマグノリアが学園長室にやって来て、何人かの生徒が呼び出されたのだ。
呼び出された生徒達には共通点があり、それは先日のアンクリシアの軍行に選出されていたメンバーだと言う事であった。
学園の生徒達の中では、その功績が認められて褒賞、もしくは卒業後の城での拾い上げがあるのではないかと言う噂でざわざわとしていた。
学園長室に呼び出された生徒達も、マグノリア女王の前で、誇らしげに胸を張るように整列していた。
もちろん、マグノリア女王に頭を挙げる事を許された後である。
いつもなら学園長が座る席にマグノリアが座り、護衛の騎士達と、学園長であるイグニスがその背後に控えている。
「うぬらを集めたのには理由がある。うぬらの中に、妾やイグニスの信頼を裏切った者がおるからじゃ」
マグノリアの言葉に、部屋の中が凍りついた。
先程まで誇らしげに胸を張っていた生徒達が、魂が抜け落ちたような顔になった。
「うぬらは学園で学び、優秀な成績を収め、ケイト王の援軍に足る力があると判断して選ばれた。そして、同じ様に優秀な成績を収めていながらも、選ばれなかった学生もおる。 その違いは、ケイト王や、王妃アリッサが学園に在籍していた時にトラブルを犯したかどうかだ。勿論、ケイト王の情報は伏せるようにと選ばれた際に伝えられたはずじゃ。なのに、この守秘義務を破り、リボル・ガーテルに漏らしたバカがおる」
マグノリアの言葉に、学生達に緊張が走った。
ほとんどの生徒にとっては寝耳に水の情報ではあるが、その事実は、国を脅かしかねない情報である。
この生徒達は、ドラゴンに乗って単身アンクリシア王国を攻め、自分達が到着するまでに全てを終わらせたケイトの実力をしっている。
そのケイトの矛先が、ウィンダムに向く可能性のある行動が、タブーである事は分かっていなければならない事だ。
この選ばれた生徒の中に、その重要性が分からない生徒はいない。……はずである。
それでは、誰がリボル・ガーテルに情報を漏らしたのか。
人の口に戸は建てられないと言うが、それでは済まされない事態である。
「リボル・ガーテルはその情報を得て、ウィンダムの街を楽しんでおられたケイト王ご夫妻を突撃して暴言を吐いたそうだ。それもウィンダムの力を使ってクロノソレイユ魔国を潰すとまで言ったそうだ」
部屋の温度は氷点下を越えて下がっているように感じる。
学生達の脳裏に《戦争》の2文字が浮かんだ。
「安心せよ。ケイト王は心が広い。最悪の状況にはならんよ」
表情が消えて、立っているのもやっとな学生達に、マグノリアは最悪の状況は回避できた事を伝えた。
しかし、その程度で部屋の温度が戻るわけはない。
「ケイト王の要望はリボル・ガーテルは勿論のこと、この件に関わった、つまりはリボル・ガーテルに情報を流した人物を見つけ出して処罰する事じゃ。悪いようにはせん、自ら名乗りを上げよ」
マグノリアの問いが、静かに部屋に響いた。
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