第117話 苦情
「リボル様、旦那様が帰って参りました」
「ん、そうか。では母上、父上に会ってまいります」
リボルは父が帰宅するまでの間、先に帰宅した母とお茶をしながら最近の学園での出来事を報告していた。
「仕方ないわね。名残惜しいけどしっかりとやっていらっしゃい」
リボルの母は、名残惜しそうにしながらリボルを見送った。
リボルは、家の入り口まで父を迎えに行く。
使用人が知らせに来たという事は馬車が戻って来たという事なので、家に入って来るまでには少し時間がある。
リボルがたどり着いた時、ちょうどリボルの父が家に入って来た時であった。
「父上、お帰りなさいませ!」
「おお、リボル。こんな時間に家に居るのは珍しいじゃないか。寮の食事の時間はいいのか?」
リボルの父はこの時間に息子が家に居る事に驚いていたが、やはり息子に会えるのは嬉しいのか、顔をにやけさせながら質問をした。
「食事は間に合わなければこちらで食べていきます。それよりも、父上に相談したい事があるのですがよろしいですか?」
「それじゃあ部屋で聞こうか」
リボルの父はゆっくりと話す為に、リボルを連れて執務室に移動した。
「それで、話と言うのはなんだね?」
リボルの父の部屋で、テーブルに向かい合わせに座った所で、リボルの話の続きを聞いた。
「はい。今日は友人からアリッサがこの街に戻って来ていると言う話を聞いて街を探していたのですが、見つけた時に男と歩いていたんですよ! しかも平民に嫁ぐと言っていました、これは由々しき事態です! 何とかしてください、父上!」
「ち、ちょっと待て、リボルよ、何と言ったのだ?」
リボルの話を聞いたリボルの父は、焦ったようにリボルに聞き返した。
「平民が勝手に国を作ったなどと言い出しましてね、アリッサを王妃にするなどと勝手な事を! アリッサはウィンダムの五大大国の気高い血を継ぐ人間です。平民の勝手な行動を許してはならない、そうでしょう?父上!」
リボルの父は、言葉を失ってしまった。
アリッサの進路は国で議題に上がった内容だ。
五大大国が支援してできたクロノソレイユ魔国に嫁ぐと言う話だ。
ドラゴンを統べ、勇者を配下に置く魔王。
リボルの父親は一応伯爵の中でも上位であり、国の重要なポストにある。
その為、ケイトの秘密も聞いている。
学園で自分の息子が追い出した生徒だと聞いた時には肝が冷えたものだ。
ケイト本人が気にしていなかったのでお咎めはなかった。その事もあり、許してくれたクロノソレイユ魔国を丁重に扱うと心に決めている。
それに、以前リボルがケイトを学園から追い出したことの経由を学園長から報告を受けた時に、リボルには散々注意をしたはずである。
ウィンダムは、平民を差別せず、優秀であれば召し上げ、爵位も与える。
リボルの弟も、母親は平民であったが、ガーテル家に召し上げたし、弟も教育をしっかりしている為、優秀な成績だと学園から報告を受けている。
同学年時のリボルの成績と遜色ないレベルだ。
リボルの父は、リボルの言動に、きついお灸を据えなければならないと、心を鬼にして口を開くのであった。
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