第110話 拉致被害者の救出
ケイトは城を落とした後、拉致被害者を解放する為に地下牢へとやって来た。
するとそこには、以前来た時とは違って、牢の中を掃除する兵士がいた。
拉致被害者も以前来た時とは違って意識がある人もおり、環境が少し改善されていた。
掃除をしている兵士は、足元を糞尿で汚しながら一つの牢屋を掃除し終えると、通路に出て来てケイトを発見した。
「わ、わたしは反対であります! この様な非人道的な生贄など、国として許してはいけないのです。女王様であろうと、断固反対であります!」
兵士は、ケイトを上司か誰かと勘違いしたのか、自分の意見を言ってユーリカ女王を批判した。
国に使える兵士としては失格だが、ケイトにとって、兵士は好印象であった。
「残念だけど俺はこの国の人間ではない。この国は俺が滅ぼした。女王は逃げたが、この国は終わりだ。ここへは、拉致被害者を解放しに来た」
兵士はポカンとした表情をした後、顔を押さえて涙声で話し始めた。
「それじゃ、この人達は助かるんだ。よかった。本当に良かった」
「あんた、名前は?」
ケイトは兵士の人柄を気に入って名前を聞いた。
「俺はトビーだ。それで、負けた国の兵士は首を飛ばすのか? 俺が死んでも、この人達の事を頼むな」
兵士はどしりと腰を下ろした。
「トビー、俺の国に来ないか? 人の事をそこまで思えるヤツが配下に欲しい」
「俺は、敵兵だぞ?」
「でも、人の事を思って行動に移せる人材は貴重だ」
ケイトの言葉に、兵士は考えるように顎に手をやった。
「この人達はあんたの所で引き取るのか?」
「いや、うちの国土は小さいからウィンダムに受け入れをお願いしてある」
兵士はダンと勢いよく立ち上がって真っ直ぐにケイトを見た。
「この人達の無事を見届けたい。アンタについていけばそれもかなうか?」
「ああ。マグノリア女王に頼もう」
ケイトの言葉に兵士はおもむろに膝をついた。
「我が剣を貴方に」
騎士の誓いの言葉であった。
「それじゃ、後から来るウィンダムの兵士達が救助しやすいように被害者を外に運ぼう」
「は!」
兵士は打って変わってケイトを主人として声を上げた。
ミステルトにも手伝ってもらう為外に出て、明かりのある場所でケイトを見た兵士は驚いた声を上げた。
「お前、あの時の血塗れの少年じゃねえか!」
ケイトは覚えていなかったが、兵士によると、ケイトがゴブリンの血塗れの姿でこの町に戻って来た時に門番をしていた兵士だったらしい。
ケイトが国王にまで成長している事に驚き、ドラゴンを見て驚き、しかしドラゴンを手懐けている事で国王になっている事に納得して、慌しい様子であったが、兵士トビーが配下に加わり、拉致被害者達の救出に成功したのであった。
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