第109話 逃亡

アンクリシアを災厄が襲った。


城を影が覆い、その影の正体はドラゴンであった。


ドラゴンは城門の上に着陸し、そのドラゴンに乗っていた1人の男が城に向かって叫んだ。


「アンクリシア王は代替わりしても拉致を辞めるどころか、己の私欲の為、我が国クロノソレイユと戦争をする為に自国民を殺し、町を、村を滅ぼした! そして、我が国に軍を差し向けた!この負の連鎖を断ち切る為、私はこの国を滅ぼそうと思う。これは対話ではない、一方的な宣戦布告である!」


男、ケイトはそれだけ叫ぶとドラゴンから飛び降りてアンクリシア城へと突入した。


現れる騎士達はトランフィヴノイズを2本の剣に変えて斬り伏せながら、城を駆け巡り、ユーリカ女王を探し回る。


城で見かけた貴族達も全て斬り伏せて、一つの部屋へと辿り着いた。


そこは城の最奥にある部屋で、ここにユーリカ王女が居るはずである。


ケイトは、勢いのままにドアを蹴破って部屋の中に入った。


部屋の中には、ドレスを着た1人の少女が腰を抜かしたような体制で逃げようと手で這っていた。


「ユーリカ女王?」


ケイトは、その姿に違和感を覚えて話しかけた。


この世界に来てすぐの時に会っただけの記憶なので、曖昧であったが、どこか記憶と違うような気がした。


「ひぃ! ま、魔王!」


「ユーリカ女王じゃない?」


ケイトは、自分の事を魔王と呼ぶ事に違和感を覚えて、目の前の少女を鑑定した。


「異世界人?」


「そ、そうよ!こんな所に来たくなかったのに!アンタのせいで!」


ケイトはトランフィヴノイズをキューブの状態に戻した。


異世界人は全員希望通りにしたつもりだったが、他にもいたようである。


しかし、今有る魔力で向こうに帰せるか分からない。


「ユーリカ女王は?」


「知らないわよ!私を置いてどこかへ行ったわよ!リョウもいないし、みんな私を助けなさいよ!」


ケイトはため息を吐いた。ちゃんと会話ができない。


「後でまた来る。待ってろ」


とりあえずケイトはこの少女との対話を諦め、地下に囚われている人達を助けに向かった。


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