第108話 出撃

クロノソレイユと五大大国同盟は、世界に向けてアンクリシアを糾弾した。


エルサ達が手に入れたアンクリシアが自国を自ら襲った裏工作の証拠。


そしてクロノソレイユに攻め入る際に、ウィンダムに許可を取らずに軍を移動させた不誠実さ。


最後に、前国王が行っていた国民、行商人などの拉致。


その拉致された人達がまだ解放されていない事など、捕虜にしたアンクリシア軍から追加で引き出した情報を含めて改めて非難したのだ。



それに対してのアンクリシアの回答は知らぬ存ぜぬであった。


しかし、この糾弾によって大義名分を得た。


後はアンクリシアを滅ぼし、地下で見た拉致被害者を助け出すだけである。


その前に、ケイトはウィンダム国王のマグノリアに交渉を持ちかけた。


それは、助けた拉致被害者の保護をウィンダムに頼みたいと言う事であった。


ざっと見ただけで被害者は相当な数であった。


その被害者を今のクロノソレイユで受け入れるのは無茶である。


それに、衰弱している人の移動距離としても、クロノソレイユは遠すぎる。


交渉材料はアンクリシアの土地である。


ケイトは、アンクリシアの城に居る貴族達や兵士達は全て殺すつもりである。


ケイトを召喚した時、周りにいた貴族や兵士達は、ケイトを呼び出す為に過去の被害者達を生贄にした人達であると想像できる為だ。


王や貴族達を殺せば、実質国は無くなる。


通常であれば、クロノソレイユに統合されるのだが、飛び地になるし、今のクロノソレイユの状況では、新しい土地などいらない。


だから隣り合わせの国であるウィンダムに、土地を報酬に被害者の受け入れを頼んだのだ。


土地が増えれば、そこに住む人達はウィンダム国民としてウィンダムに税金を支払う様になるし、助けた被害者達も然り。


土地が増えるだけで得しかないのだから、はじめの被害者の保護など、ウィンダムにとっては自国民を助ける様な物だ。


ケイトは約束を取り付けた後、被害者を助ける部隊をすぐに編成するように頼んで、1人で、いや、ミステルトと2人でアンクリシアを滅ぼしに出陣する。



「主、今回はこの姿で良いのじゃ?」


「ああ、クロノソレイユがどの様な国か世界に知らしめる必要がある。もう、誰も手を出そうとは思わないように」


「分かったのじゃ!」


ミステルトは、ドラゴンの姿へと戻ってケイトを背中に乗せてアンクリシアまで飛ぶのであった。

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