第103話 戦闘開始

国境を越えてクロノソレイユへ入り、城を攻める準備をしている最中、リョウは標的の町を見て拍子抜けしていた。


「あれがクロノソレイユ城? 城下町もないし、これが国なのか?」


リョウの質問に、騎士団長が頷いた。


「五大大国に認められた国だと言うからどんなものかと思えば、城がポツンと立っているだけ。ここは既にクロノソレイユ国内のはずだが、警備も無い。これが国と言うに値するのか?」


クロノソレイユ魔国の国土は大きな町程度。


地球の規模で言えば、バチカンの様な規模である。


しかも、国民もまだ居ないに等しい為、城以外の建物はない。


その様子に、騎士団長も拍子抜けの様だ。


「ユーリカ様が言った様に、この規模の軍隊でも楽に落とせそうだ」


「アグノス殿、油断は禁物ですよ」


「分かっておるよ」


計画の時間は刻一刻と近づいてきている。


自国の軍が自国の町を攻め落とすのに失敗するはずもない。


いよいよ実行の期日となり、アンクリシアの軍は進軍を開始したのであった。



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「ユイト、なんか向こうからたくさんの人が向かってくるにゃ!」


クロノソレイユ城ので、カルが尻尾をピンと立てて望遠鏡を覗いてそう叫んだ。


「ああ、そんなもん覗かなくても障害物が無いんだからみえてるよ。移民か?」


「にゃー、みんな鎧を着てるにゃ!」


窓から覗いているが、見張り台にいかなくても確認する事ができた。


「とりあえずエルサに報告に行くか」


「にゃ!」


「2人とも、そんなにのんびりしてて大丈夫なの?」


ゆっくりと行動を開始するユイトとカルに、ミリィが呆れた様子でツッコミを入れるが、ミリィ自身も急ぐ様子はなかった。


何も無いが故に遠くからでも攻めてくるのは分かる。


早めに察知できる分、準備をするのにも時間がたっぷりあるのだ。


エルサに報告を済ませると、キイとカリンも楽しそうに集合してきた。


遠くから見るのは大隊規模の軍隊。


クロノソレイユに攻めてくるのは五大大国以外だと予想ができる。


エルサにキイとカリン、カルとミリィは七風花であるアリッサの母シャディに修行を付けてもらっていたし、カルとミリィは更にケイトによって魔法の才能を見出されている。


ユイトも単独でBランクの冒険者や、エボルティアの騎士団長を軽く倒す実力がある。


少数精鋭ながら、一人一人の単体戦力でさえ大隊規模を退けるには十分と言える。


ケイトの馬鹿みたいな強さや、ドラゴンのミステルトと比べてしまうとアレだが、クロノソレイユなら家臣達は皆一騎当千の強さである。


攻めてくる大隊が一定のラインを越えた時、ユイト達は戦闘を開始するのであった。



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