第102話 すれ違い?
してやられたな。
それがケイトの印象であった。
クロノソレイユとアンクリシアの戦争は、アンクリシア国王の首が飛んだ事で始まる前に終わりになるはずであった。
しかし、その最中を狙って、クロノソレイユがアンクリシアの町を攻め落とした。
実質の騙し討ちによる宣戦布告。
この情報は、クロノソレイユの印象を確実に悪くする。
ケイトはそう思った。
クロノソレイユが悪となれば、五大大国は援護しにくくなり、クロノソレイユは孤立してアンクリシアとの戦争をしなければならない。
それに、アンクリシアに大義名分ができた事で、他の国がアンクリシアに手を貸す可能性もある。
しかし、そう思っているのはケイトだけであった。
五大大国の王達としては、クロノソレイユの国民が軍隊に満たない程に少ないのは知っている。
この世界は五大大国が大国と呼ばれる程に力があり、他の国は小国よろしく力は一段下がる。
五大大国がクロノソレイユの実情を語り、この戦争が仕組まれた物だと発表すれば、クロノソレイユとアンクリシアを戦わせるための工作だと他国を疑う事を優先して戦争を躱す事ができるであろうとの事であった。
なので、取り急ぎに、五大大国は連盟で世界に向けてクロノソレイユの人口や、この戦争に裏があるのではないかと言う事を世界に発信した。
本来なら、これでしばらくは戦争の膠着状態になるはずであった。
しかし、その発表と同日、ケイトの元にクロノソレイユに居るエルサから連絡が入った。
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アンクリシア王国魔道師団長のアグノスは、馬車で行商人のふりをしてウィンダム王国を横断してクロノソレイユ魔国へと向かっていた。
乗り合い馬車や行商人、貨物など、色々な馬車に偽装してアンクリシアの軍隊はクロノソレイユ魔国の手前、ウィンダムとの国境辺りで落ち合う為に移動をしていた。
アンクリシアとウィンダムの国境を過ぎた後は、不審に思われない様に、出来るだけ町や村には立ち寄らずに、目的地をめざした。
アグノスが集合地点にたどり着いた時には、ほとんどの人間が到着していた。
しかし、ほとんどと言っても今回の作戦は少数精鋭だ。
アグノス率いる魔導士部隊が2枠、騎士団長率いる騎士隊が4枠、それからユーリカ女王子飼いの凄腕冒険者であるリョウである。
クロノソレイユ魔国は国と言いながら一つの街しかない小さな国である。
それに、信仰の国な為、守る軍も精鋭は育っていない筈である。
作戦日時は決まっている。
別働隊が自国アンクリシアの端の村や町を襲って、ユーリカ女王が宣戦布告をするまでの日取りの後、作戦決行までの間、アグニス達は身を潜めるのであった。
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