第101話 戦争の始まり
世界に向けて、五大大国とクロノソレイユ魔国から発表があった。
アンクリシア王国が勇者召喚を真似た秘術を行う為、被人道的な行いをしており、他国の人間を攫ってきて生贄にしていると言う発表、糾弾であった。
そして、五大大国、クロノソレイユ魔国共に行商人などの行方不明者を詳しく調べた所、アンクリシアで消息を立っており、拉致被害者の解放をアンクリシア王国に要求した。
誠意ある対応が行われない場合、実力行使をも厭わないという発表であった。
それに対してのアンクリシアの発表は、自国にクロノソレイユがスパイ活動を行っており、その結果、スパイを捉えただけで、クロノソレイユや五大大国が言う様な事実はない。
スパイ活動をしていたクロノソレイユこそが悪であり、クロノソレイユは、スパイの証拠の抹消をする為に、一度アンクリシア城を攻めたとも発表した。
この発表により、五大大国、クロノソレイユ同盟と、アンクリシア王国の戦争準備状態へと移行してしまった。
アンクリシア王の目論見としては、クロノソレイユを悪として、五大大国関係なく争うつもりであり、五大大国には、クロノソレイユを庇うのではなく、正しい目で状況を見てほしいと訴えたつもりであったが、思った様にはならず、挙句に、自分がクロノソレイユと戦争を起こす為に協力を仰いでいた同盟国からは、全て協力を断られてしまった。
それもそのはずで、協力を打診した国も、クロノソレイユ魔国の事を五大大国が支持していると言う情報は既に掴んでいる。
そうなれば、真実どうこうではなく、重要なのは、勝ち馬に乗れるかどうか。
沈むのが濃厚な泥舟であれば、乗らないのが鉄則である。
総スカンを食らったアンクリシア王は憤りを感じていた。
「クソ! なぜクロノソレイユなどにビビってどの国も力を貸さんのじゃ!」
憤りを露わに叫ぶアンクリシア王の元に、ある人物がやって来た。
「そんなの当たり前ですわ。愚王と共に泥舟にのるバカがどれほどいると言うのでしょう」
「なにを!汚れた分際で、私をバカにするか!」
自身を嘲笑う様な物言いをする娘に、アンクリシア王は叫んだ。
しかし、相対するユーリカは、その父の行動を嘲笑し、持っていた扇子で口を隠しながらも隠すことはなかった。
「バカなお父様、こんなになるまで自分の状況に気づかないなんて」
ユーリカの言葉の後に、魔道師団長のアグノスや、騎士団長、それに、貴族達がユーリカに従う様に膝をついて頭を下げた。
「な、なにを……」
「これでもまだ状況が分からないならやはり愚王ですわね。都合のいい妄想に取り憑かれ、勇者召喚を夢見る哀れなお父様」
ユーリカは自分の手駒を使って、貴族達を味方に付けた。
元々魔道師団長と異世界人と言う強力な手駒を持っていたユーリカは、騎士団長から口説き落とし、自分を穢れたと馬鹿にした貴族達をも恐怖と言う鎖で支配下に置いた。
「お父様の時代はもう終わりですわ。潔く引退するか、それとも抵抗して命を散らすか、選ばせてあげますわよ? まあ、引退してもその首がついているかは分かりませんけど」
そう言って楽しそうに笑うユーリカの笑い声は、人に恐怖を抱かせる物であった。
数日後、アンクリシア王国は国王が行っていた非人道的な行いを認め、国王の首を差し出す事で事態の収束を求めた。
戦争は行われず、一応の平和的解決で終わるかと思われたその時。
アンクリシア王国はクロノソレイユの軍隊によって自国の町に襲撃が行われた事を発表した。
アンクリシア王国が平和的解決を求めたにも関わらず、攻撃を開始し、町を一つ潰し国民の命を奪ったクロノソレイユ魔国を悪として、義を持って戦争を開始すると、アンクリシア王国の新女王ユーリカは、世界に向けて宣言するのであった。
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