第100話 戦略

アンクリシア王国は宣戦布告の準備を進めていた。


しかし問題となるのはクロノソレイユへ攻め入る方法であった。


隣あった国ではなく、クロノソレイユは五大大国に囲まれた国の為、戦争を起こすには五大大国に大義名分を持って軍隊を通過させて貰う必要がある。


普通、自国を通過させるのは嫌がられる物だ。


国としての信用が余程なければ、軍隊を国に入れると言う事はそれだけでリスクになる。


下手をすれば自国が戦場になるし、裏切りにあって自国を攻められる可能性もゼロでは無い。


いや、むしろそれを想定していない王は愚王であろう。


とすれば、人の領土でない所を通過して攻めねばならない。


そう。魔の森だ。


魔の森は各国に少なからず存在しており、強いモンスターが出るそれらは、誰の領土でもない為、通るのは自由である。


飛地になっている場所と戦争する場合は、ここを通る他ないのである。



魔導師団だけでは魔の森を越えるのは不満である為、他の国を抱き込もうと、以前より五大大国に不満を持っているであろう隣国へと使者を送った。


捏造したクロノソレイユの悪行を書き連ね、アンクリシアに工作員とスパイが入り込んでいたと言う事にする。


クロノソレイユを世界的に悪とすることが出来れば、クロノソレイユを国としての認めた五大大国の落ちだとなり、五大大国へ傷をつけることができる。


なので、隣国の返事は良いものになるだろうと、アンクリシア国王は予想している。



のだが、そんな甘い話は無い。と、ユーリカは思っている。


まず、魔の森を越えると言う事がどれだけ大変かと言う事を父は理解していないのだろう。


一昔前に魔導師の国として栄えたこの国も、召喚勇者に頼ろうとして生贄の為に治安が悪化した事で優秀な人材が他国に流出してしまっている。


魔導師長のアグノスに、忖度無しで魔の森を攻略できるかと聞いた時に言い淀んだので魔の森攻略が難しいのは間違いない。


本気で戦争を仕掛けるなら、正々堂々と国越えをお願いするのではなく、旅人に偽装してクロノソレイユに冒険者のような武装した人間を送り込み、いきなり国を襲った方がいいに決まっている。


戦争の理由は、クロノソレイユの兵士に偽装させた人間にアンクリシアの町を襲わせればいい。


宣戦布告も無しにアンクリシアを襲った事実を捏造すれば、向こうを攻める大義名分ができる。


その後なら、自国を守る為に五大大国に了承を得ずに攻めたとしても、その国に被害が出ていなければ見逃される確率は上がる。


それどころか、クロノソレイユの兵士を捏造すれば、五大大国に軍隊を通した、見逃してしまった負目ができる事になる。


その為には、速やかな戦争の終結が必要になる。


勝てば官軍なのだ。


その為の少数精鋭は手駒にある。


普通の兵士など相手にならない冒険者と、魔導師団長。


この2人を送り込めば、まだ出来上がってない小さな国なら攻め滅ぼす事ができるだろう。


ただ、その前に父から王位を奪う方が先である。


ユーリカの企みもは水面下で進んでいくのであった。




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