第98話 下準備

ケイト達は、1月ほどかけてウィンダムまでやって来た。


街に入ると、馬車はそのままアリッサの家へと向かう。


直接城に向かってもいいのだが、マグノリア女王に謁見するのに、ケイトの立場があっても伝令で時間を使う為、アリッサの父親か七風花セブンナイツである母親に繋いでもらった方が早いだろうと言うアリッサの提案だ。


それに、全員で押しかけるのは失礼なので、ケイトとアリッサ以外を待たせてもらうとも思っている。


家に辿り着くと、母親のシャディが出迎えた。


「あらあら、アリッサちゃんどうしたの? ケイトちゃんもいらっしゃいね」


ほわほわとした様子は相変わらずである。


「ママ、急ぎで女王様に謁見を申し込みたいの」


アリッサがこれを言うのは2度目である。


1度目は魔王の真実を伝えに来た時。


だとすれば今回も急ぎの要件なのだろう。


ケイトの王としての立場を使えば謁見は叶う。


それをここに頼みに来たと言うのは少しでも早い方がいいと言う事なのだろう。


「分かったわ、急ぎなのね」


理解の早いシャディと共に、ウィンダム城へ向かった。


その後、マグノリア女王に会うのはスムーズであった。


謁見の広間ではなく、マグノリア女王の執務室である。


「シャディが来たと思ったら、魔王殿もいっしょかえ。何用じゃ?」


マグノリア女王は執務の手を止めてそう質問した。


「実はマグノリア女王に協力をお願いしたい事がありましてね」


ケイトはアンクリシアで行われている国主導の誘拐と監禁、そしてそれを生贄として行われると予想される召喚魔法の話を話して協力を求めた。


「成程、魔王殿の家臣が被害にあったか。その様子だと我が国にも被害は起こっていそうだし、召喚の後に考えている事など知れてあるな」


納得した様にマグノリア女王は頷いた。


ウィンダムからも、アンクリシアに商人が行き来して貿易をしている。


その商人が被害にあっている事を否定する要素はない。


「しかし、そうとなれば他国に文句を言わせぬ対策も必要よの」


マグノリア女王が言うのはケイトが単独で動くのではなくウィンダムに助けを求めたのと同じだった。


ケイトの国、クロノソレイユはまだ国として小さく、五大大国以外への影響力が小さい。


その為、下手にアンクリシアを攻めれば、アンクリシアを庇う国も出て来るだろう。


虚偽の理由で攻めたとなれば、国としての信用は地に落ちる。


勝てば官軍といえど、それ以降の他国との付き合いは影を落とす。


なので、真実を真実とする為の行為が必要なのだ。


この真実とは、他国がどちらを正義と取るかと言う事である。


「それでは、他の五大大国全てに連絡を取ろう。そうすれば、他の国は文句を言うまい」


「だけどその時間が惜しい」


ケイトの言葉にマグノリア女王はいい笑顔で首を横に振った。


「五大大国にはな、直ぐに連絡を取れる秘密があるのじゃよ」


マグノリアはそう言ってケイトに秘密の通信部屋へ案内するのであった。








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