第91話 城門

翌日、ケイトはアザレアとアリッサ達を連れて城へと向かった。


ローザの気配を索敵できれば1番良かったのだが、ケイトがこの町にいた時には索敵も何も使えなかったので、ローザの気配は分からない。


なので、城に乗り込んだ後は正直ミステルト頼みなところがある。


動物の嗅覚だ。


ミステルトは気配を探るのも得意だが、匂いにも敏感である。


その為、アザレアにローザの持ち物を持ってきてもらってミステルトに覚えてもらった。


城門まで行くと、兵士が2人守っていた。


「止まれ!」


大きな声で叫んで1人の兵士が寄ってくる。


「何用だ?」


「我々はクロノソレイユ国から来た。こちらは国王のケイト様だ。こちらの王にお目通り願えるか?」


訪問の定型分をリアがつらつらと話した。アポ無しではあるが、国王であれば融通が効くだろうと言った所だ。


兵士は驚いた顔をして、確認を取ろうとしたが、もう1人の兵士が待ったをかけた。


「その様な嘘に騙されるな」


もう1人の兵士はニタニタと笑いながらケイトの方へ近づいてきた。


「お前の様な雑魚が王な訳がないだろう」


兵士の物言いをアリッサが咎めようと口を開こうとしたが、その前に兵士は話を続ける。


「忘れねえよ。お前、召喚失敗作だろう? 俺が蹴っ飛ばして追い出してやったんだからな」


どうやらこの兵士はケイトの事を覚えていた様だ。ケイトの方は覚えていないのだが、話の内容的にそう言う事だろう。


「どう言う事だ?」


初めに話を聞いてくれた兵士は、そう言って兵士に確認をした。


「こいつは、王でも何でもないどころか、王女様を穢した罪人だ」


余計な罪まで被せられ、話の通じなさそうなこの状況にケイトがどうしようかと思った時、隣に居たアリッサが動いた。


ケイトを罪人呼ばわりした兵士の腕を捻り上げて地面に膝をつかせたのだ。


「痛てててて、何しやがる!」


「無礼者!一国の王を罪人呼ばわり、クロノソレイユ国は五大大国に認められた正式な国。国王への侮辱、貴様の命だけで済むと思うな!」


ケイトを罪人呼ばわりされた事に、アリッサは相当怒っているようで、ものすごい剣幕で怒鳴った。


しかし、兵士に手を挙げるのは悪手ではないのか?


ケイトはそんな事を考えながら地面に視線を下ろした。


城の地下に大量の人の気配がする。


それも、弱々しいものぼかりだ。


ケイトは強行突破をしようかと考える。


アリッサの行動に反応したのか、もう1人の兵士が笛を吹いて応援を呼んだ。


この国の兵士は、他国の国王を名乗る者が現れても確認もせずにこの様な態度を取るのか。


質が悪すぎる。


ケイトは、自分の国ではもっとちゃんとした教育をしようと決めた。


「ここまで騒ぎがデカくなったしもう押し入るか。話が通じない」


「そうね、その方が楽だわ」


アリッサの返事と共に、ボキリと兵士の腕が砕ける音が聞こえ、兵士は悲鳴を上げた。


命までは取っていないが、捻り上げていた手に力を加えて折ったようだ。


「地下に反応が多い。ミステルト、どうだ?」


「あってるのじゃ! 下から匂うのじゃ!」


「それじゃあ、行くか」


ケイトを先頭にミステルトとアリッサが続き、リオも「行くわよ」とアザレアに声をかけて後を追った。


穏便にと言う言葉はどこに行ったのか。


アザレアは呆気に取られていたが、ローザを助ける為に気合いを入れるとケイト達を追いかける。


ケイトの魔法で扉を吹き飛ばし、城の中へと侵入するのであった。

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