第92話 救出
城門は鉄製のしっかりした物であったが、ケイトの火魔法によって一撃で爆発して吹き飛んだ。
吹き飛んだ部分はブスブスという音を立てて赤く溶けてしまっている。
中級火魔法であったが、ケイトの魔力とアダマンタイト骨格の恩恵によって威力はとんでもなく上振れしている。
「主の目が綺麗なのじゃ!」
ミステルトがケイトを見てそう声を上げた。
「え?」
ケイト自身は見えないのだが、ケイトの瞳は虹色に輝いている。
ケイトは全ての5つの精霊の加護を手に入れても身体的特徴に変化は無かった。
リオの様に青くなる事も、ミステルトの様に属性色のメッシュが入る事も無かった。
単純に、色が混じって黒に落ち着いたのかと思っていたが違う様で、魔法を使った時などだけ瞳の色が虹色に変わる様であった。
「本当ね、綺麗」
「確かに、混ざってる様で混ざってない不思議な感じだけど、とても綺麗って今はそんな事言ってる場合じゃないんじゃない? 早く助けに行かないと」
城門を吹き飛ばした音はかなり大きな物だった為、すぐに衛兵等が集まってくるだろう。
「ミステルト、下だな?」
「そうなのじゃ!」
ケイトはミステルトに確認をとると先頭を走り出さした。
マッピング等の便利なスキルはないが、索敵の反応具合でなんとなくこっちだとわかった。
ちなみに、アザレアはついて行くのにやっとで話に混じれていない。
だが、ついては来れてるのでケイトは進むスピードを緩めなかった。
時間の経過で捕まっているローザがどうなるかも分からないのだから。
地下への階段を降りて地下牢へと向かう。
牢屋番がいたが、騒ぐ前に気絶してもらった。
牢屋の中はすえた臭いがして空気が澱んでいた。
周りの牢を見れば牢屋というよりも管理の悪い病院の様で、ベッドに人が寝かされている人がかろうじて生きているだけで、なんの処置も管理もされていない。
「酷い……」
「うっ、この世界に来て酷い匂いには慣れたつもりだったけどそれでも、グゥ」
リオはこの状況がとても辛そうだ。
ケイトも同じである為、先を急ぐ事にする。
物語に出て来る勇者様なら全員を助けるのかも知れないが、助けてもこの状態から完治まで面倒が見れる訳でもなし、目的を優先させてもらう。
「ローザ、分かるか!私だ!」
先に走って行ったアザレアの声が聞こえる。
ローザを見つけたのだろう。3日しか経ってないとはいえ、この状況では丁寧な扱いは受けていないだろう。
牢の前でアザレアが呼びかけている場所まで向かうと、案の定ローザの牢も他と同様に衛生状況は良くない。
「クソ、ローザ、待ってろ、今門番から鍵を取り返してきてやるから」
「その必要はないわ」
アリッサは風魔法をレイピアにのせで鉄格子を叩き切った。
アリッサが武器に魔法を乗せられたのはケイトが渡したミスリル製の武器のおかげである。
それを、ユイトに教えてもらいながらこっそり練習していたのだ。
本当はもっとケイトに成長をら褒めてもらえる時に披露したかったが、この状況への怒りでそんな事はどうでも良くなってしまった。
「ローザ!」
アザレアは、ローザに駆け寄ってだかえ上げた。
「アザ……レア、汚____」
「大丈夫だから、無理に喋らなくていい」
ローザの身体は汚物で汚れ、身体は冷え切って唇やて先などの血色はすこぶる悪くなっている。
ローザはクウォーターとは言え、蜥蜴獣人の血が入っている為、人よりも寒さに弱い。
地下の石造りの床に放って置かれれば、低体温症で命も危なくなる。
「アザレア、こっちだ」
状況を見たケイトが水魔法と火魔法でお湯の塊を空中に作る。
「分かった!」
アザレアはローザを抱かえてその中に飛び込んだ。
ケイトは魔法を調節して2人の顔だけお湯の外に出した。
「あったかい」
アザレアはローザの体の汚れを取るのが先だと思っていたので水ではなくお湯だった事に驚いている。
ケイトは汚れたお湯だけ綺麗に分けると汚れたお湯はコントロールを手放した。
汚水はそのまま床へと落ちて、床を一部洗い流した。
「温かい……アザレア、これが夢じゃなければまたあの人に____」
ローザの声が途切れた事に焦るが、呼吸はしているので気を失っただけだろう。
アリッサがローザの首に手を当てて脈を測った。
「さっきよりも血色は良くなってきてるし、脈もしっかりしているから大丈夫よ」
「目的は達成しらし早く逃けらしまひょう。帰ってから
リオは水のせいで登ってきた臭いに耐えられないのか鼻を摘んでそう言った。
意見は尤もなので、急いで脱出する事にする。
アザレアがローザをおんぶして城を脱出する。
ローザの治療が最優先な為に城を攻めるなどはせずに退却あるのみである。
脱出の最中、ケイトは自分達を遠くから見る視線に気づかなかった。
「____様、そちらは危ないです」
立ち塞がる兵士を魔法で吹き飛ばし、ケイト達は城を脱出して逃げる事に成功するのであった。
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