第87話 初めの町
ケイト達は長い馬車の旅をして五大大国の外までやって来ていた。
そこは、ケイトがこの世界で1番初めに訪れた町であり、ケイトをこの世界に召喚した国の城下町。
国の名前を《アンクリシア》と言う。
昔は魔術師が集まる魔導王国として知られ、五大大国と張り合う程の魔術師が沢山いる事で知られていた。
しかし、ある時を境に法律が法をなさなくなり、荒くれ者の集まる町、そして、犯罪者の町と密かに言われる様になった。
最近は街を良くしようとする地元民が騎士に入隊した事で少しはマシになって来ている物の、まだまだ治安が良くなったとは言い難い。
ケイトは馬車から降りると、急に懐かしさを感じた。
体感で言えば20年以上前の話になるし、この町にいたのはほんの数日。
なのに自分がまだ異世界に来て夢を見ていた初々しかった時の事を思い出した。
ケイト達はとりあえず冒険者ギルドに行ってみる事にする。
荷物はケイトの収納の中にあるし、宿は、また後でいいだろうと、ケイトがこの町の知り合いでとりあえず思い当たる場所に行く事になったのだ。
ケイト達が冒険者ギルドに入ると、ギルド内の視線が突き刺さった。
そのほとんどは、ケイトではなく他の3人に向けたもので、決して居心地の良いものではなかった。
とりあえず受付の方に行ってみるが、ケイトがピンとくる顔は見当たらない。
それもそうか、数年も経てば同じ人間が居るかなんて分からない。
記憶も薄いこの町はハズレだったのだろう。
ケイトが見切りをつけてギルドを出ようとした時だった。
「おい、お前、ケイトじゃないのか?」
呼びかけられてケイトが声の方へ振り向くと、そこには目つきの悪いちんちくりんの女性がこちらを見ていた。
ケイトの頭にぼんやりとした記憶が戻ってくる。
「アザレア?」
「やっぱりケイトじゃねえか。どうしたんだ、こんな町に戻って来て」
アザレアはぶっきらぼうだが、根が優しい女性だったと思う。
驚いた様子の彼女の目元には、クマができており、疲れが伺える。
「ああ、少し用事があって」
「そうか、お前も仲間を見つけたんだな。良かった良かった」
アザレアはそう言ってぎこちなく笑う。
アザレアがウィンダムの学校を勧めてくれなければアリッサ達と出会う事もなかっただろう。
ケイトはそこで、ふとアザレアと一緒にいた冒険者の事を思い出した。
「アザレア、今はローザと一緒じゃないのか?」
「あ、あーはは。ここで立ち話もなんだから場所を変えようか」
アザレアはそう言うと受付に行って話をすると、ケイト達の所まで戻って来た。
「それじゃ、こっちだ。ギルドマスター室は覚えてるか?」
ケイトとしては、ギルドマスターも変わってなければ知っているから問題ないのだが、いきなりギルドマスター室で話す様な話なのだろうか?
ケイト達はアザレアについてギルドマスター室へと向かった。
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