第86話 ミステルトのお願い
ガルマンとメルピアの家で数日過ごし、ケイト達は旅にでた。
この数日でカールの虜になったミステルトは馬車が発進してガルマン達の住む町が見えなくなっても、まだ名残惜しそうに町の方を見ている。
ガルマン達は先にクロノソレイユに向かってもらう事になっている。
「旅が終わって国に戻ったらまた会えるんだから、元気出しなさいよ」
「のじゃ〜」
アリッサもミステルトを励ましながらも、アリッサ自身も親戚の家から帰る時の様に、寂しさを感じているのだと言う事をリアは察して微笑ましく思っていた。
「そうなのじゃ!」
寂しさに元気のなかったミステルトが急に大きな声を上げた。
「どうしたんだ?ミステルト」
ケイトがミステルトに声を掛けると、ミステルトは満面の笑みで町の方からケイト達の方に振り向いた。
「主、アリッサとリオと早く子供を作るのじゃ! きっとかわいい子が生まれてくるのじゃ〜」
ミステルトの発言に、ケイト、アリッサ、リオの3人は顔を赤くした。
ケイトは若返る前から未経験であるが、この反応から、アリッサとリオも経験は無いのだろう。
「なななな何言ってるのよミステルト!」
「そ、そうよね、そう言うのはちゃんと段階を踏んでからよ」
アリッサとリアがものすごい勢いでミステルトの言葉に反応する。
「どうしてなのじゃ?2人は主の妃になったのじゃろう? つまり番なのじゃ!だったら早く子供を作るのじゃ!」
ケイトが王になり、2人が妃となった事で、早く世継ぎを作ると言った面から見ても、ミステルトが言っている事は何も間違っていない。
しかし、正論どうこうではなく、未経験者の3人にとっては、この場の雰囲気もへったくれもない場所で、当事者顔を合わせて話すなど恥ずかしい話題でしかなかった。
「ミ、ミステルト、今は旅の途中だから難しいんだ。人は子供を産むまでに10ヶ月かかる。その間は安静にしているのが望ましいから、その話は旅が終わってからになるな」
「そうなのじゃ? 卵を他の者に見てもらうのはダメなのじゃ?」
「人は卵から産まれるわけでは無いんだよ。ずっとお腹で育つんだ」
ケイトはミステルトに人について教える。
「確かに、あの時メルピアはお腹の中でカールを育てていたのじゃ」
ミステルトは以前ガルマンとメルピアと一緒に町まで移動した時を思い出して納得してくれたようだ。
「それじゃあ主達の子供を見るのは国に戻ってからになるのじゃな。エルサも居るし楽しみが増えたのじゃ!」
ミステルトは未来のケイトの子供達を想像して顔を緩ませた。
「私だって、ケイトの子供は早く欲しいわよ」
「私は、まだ怖いかな」
アリッサとリオが2人で何かを小声で話しているが、ケイトの耳には届いていない。
そのうちに話題は別の物へと移って行き、馬車の旅はまだまだ続くのであった。
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