家臣招集編
第79話 穢れた女
城の廊下を、女性が歩いていた。
「あら、穢れた女が道を塞いでいるわ」
「お姉様……」
「ふん、姉と呼ぶのはやめて欲しいものね、お前が妹だと思うと寒気が出る」
少女はこの城の第2王女である。
数年前までは姉よりも期待された人生を送っていた。
それがある日突然、穢れた王女と言われ、この姉だけでなく城に居る全員から忌避の目を向けられる事になった。
その出来事とは召喚の儀式であった。
女性は父親である国王に言われるまま、召喚の儀を行い、異世界の人間を召喚した。
1度目は召喚できたのだが、伝説の勇者と言うには程遠いステータスで、すぐに城から追い出される事となった。
その人物に、秘密裏に召喚の儀式を行っている事を広められたくなかったので、口封じに少しの路銀を渡してやったので、この事は世間では広まっていない。
世間に広まっていないものの、問題になったのは次に行われた2度目の召喚であった。
議論の結果、勇者が呼び出せなかったのは生贄が足りなかったからだと言う結論に至った。
召喚の儀式に必要なのは無垢な女の魔力と大量の生贄である。
2度目も、犯罪者や他国からの商人、旅行者、孤児などを誘拐して生贄を集め、召喚の儀式を行なった。
この国は、生贄を大量に手に入れる為に、法整備を甘くして治安を悪くしているのだ。
犯罪に紛れれば、国が誘拐事件を起こしても気づかれにくい。
その結果、2回目に集められた生贄は一回目の倍であった。
それなのに召喚は不発に終わり、生贄の命だけが犠牲になった。
1度目は召喚が成功していた為、神のお許しが出た崇高なおこない。
しかし、2度目は神がお許しにならなかった大罪と言う意見が貴族達の中で広まっていった。
その結果、召喚失敗の原因は無垢な魔力が穢れたからだと、女性に罪がなすりつけられたのだ。
ただ、召喚の事は内密な理由な為、王女である女性を追放するにはあまりにもリスクがある。
それに、国王としては女の子供は外交の道具なのだから他国から娘の価値を落とさない為に、そのまま第2王女の地位のまま捨て置かれている。
ただ、噂と期待されていた女が期待を失った結果、噂が噂を呼んで穢れた王女として、城内で差別的な扱いを受ける事になってしまった。
女性が暗い生活を送る中、五大大国からある知らせが世界に向けて発信されたのであった。
五大大国の中心に特別な領土を設立すると言った話だ。
この話は、五大大国以外の国にとって、五大大国が更に結束を強めて強力な国になると行っている様なものであった。
女性の父親である国王は五大大国を目の敵にしており、この話に怒り狂った。
そして、どうにかしてこの話を利用して何かできないかと考える様になる。
その道具として、女性が使われる話がある事、ゴミの様に使い潰される事を笑いながら話す姉を見て、少女は恨みを募らせる。
自分を利用したこの国を、貶めた召喚の儀式を。
そしていつしか、女性は自分の欲望に忠実に、復讐を考える様になるのであった。
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