間話 帰還した少女

私はこの夏、不思議な出来事にあった。


たぶん、これが神隠しと言う現象なのだろう。


ここではない別の世界へ飛ばされて、冒険をしたのだ。


最終的には、魔王に元の世界に返してもらうという物語とは違った展開であったが、あの出来事が本物であったのは、周りでの出来事から想像できる。


私は異世界には幼馴染4人で召喚されて、戻って来たのは2人だった。


私と、もう1人は貴弘たかひろ君だった。


貴弘君は、向こうの世界がトラウマの様で、忘れたいからと言って、今ではもう学校で会っても挨拶すらしない仲になってしまった。


勉強に打ち込んで塾の日も増やしたと噂で聞いた。


戻って来ていないりょうちゃんと由香里ゆかりちゃんの両親は、捜索願を出したり、大事になっている。


幼馴染の中でも家が隣だった諒ちゃんの両親なんかは、私に怒りをぶつけてきたりもした。


小さい頃から、甘やかされて育った諒ちゃんの面倒をお願いと言って押し付けられてきた。


大人の言う事は怖かったし、ずっと一緒だった諒ちゃんの面倒を見るのは当たり前だと思っていた。


それに、いつもは怖いのに、たまに優しく接してくれる諒ちゃんの事を好きなのだと思ってもいた。


諒ちゃんは他の人を好きなのだと分かっていても、いつかは自分に振り向いてくれるのではないかと、真面目に思っていた。


今となっては鼻で笑ってしまう。


向こうの世界で、色々と危険な状況になっても幼馴染たちはこちらの世界と変わらない脳内お花畑で、モンスターを前にして由香里ちゃんにいい所を見せようと必死で、とばっちりは全部私。


下心丸見えの現地人の方が常識的な行動を取ってくれるほどだ。


そうなれば恋心なんて一瞬で冷めてしまうどころか、それが恋心では無く、恐怖心からくる義務感であると考えるいいきっかけになった程だ。


帰って来ていない2人は、チャンスを逃すどころか逃げ出してしまった訳だが、それの面倒を見る筋合いは私にはない。


私は、貴弘君とは違って異世界に行って良かったと思っている。


向こうのモンスターに比べれば、諒ちゃんが居なくなった責任を押し付けようと怒鳴ってくる諒ちゃんの両親なんか怖くもなんともない。


クラスメイトや、先生にも、オドオドしてしまい、自分の意見は言えなかったが、今ではそんな事は無くなった。


異世界に、私を縛っていた呪縛を置いて来た事でこれからの人生は自由に選択できるだろう。


何もかも、敷かれたレールを歩いて来た人生だったけど、異世界で過ごした記憶は私の人生を見直すいい機会だった。


だから、私はこれからの人生を異世界の経験を生かして自分の未来を歩いて行こうと思う。

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