第62話 出発
ウィンダム王国にある王立学園にイベントの季節がやって来た。
チームで別れて他国に遠征に行き、他国を知って見識を深める。等が建前であるが、実際の所は生徒達の行きたいところに行く旅行である。
日本の修学旅行の様なものだ。
出発の準備をして、それぞれがそれぞれのルートを決めて、それぞれが決められた期間の旅をまとめてレポートを学園に提出するのだ。
近場に行く生徒達は、まだ出発さえしていないが、遠出をする生徒は、そろそろ出発して行く頃だ。
その生徒の中に、アリッサ達の姿もあった。
アリッサ達は、新しく入ったチームメイトと、フレミュリアまで行く事になっている。
どうしてそうなったかと言うと、新しいメンバーのゴリ押しと言う部分が大きかった。
「さー、出発だよ、キイちゃん!」
「楽しみだね、カリンちゃん!」
ケイトが去ってからしばらくして、転入生が入って来た。
本来、学園に転入はできないはずだが、特別な理由があって転入を許されたのだそうだ。
アリッサ達は、その理由を伝えられている。
この2人は、教科書にも載っている初代国王と同じ、勇者召喚で呼ばれた勇者なのである。
周りには大っぴらに事情を伝えず、学園で実力をつけてもらう為に、貴族の少ないブリゼに転入して来たのだ。
そして、成績の1番良かったアリッサのチームに入る事になった。
アリッサ達が快く受け入れたのは、彼女達にも目論見があったからである。
勇者は近い将来世界を旅する事になる。
ならば、それについて旅をすれば、いち早く自分達の目的であるケイトを探す旅ができると考えたからだった。
「魚を食べるにゃー!」
「カル、もう、2人の真似しちゃって」
「にゃ? 魚は猫獣人にとって至高の食べ物らしいにゃ。楽しみだにゃ〜」
「2人とも、カルに何吹き込んだの?」
「「ミリィが怒った〜!」」
「怒ってないから!」
こんな風に、思惑はあれど、仲は良好である。
「アリッサ、あの日を思えばこうやって笑える様になったのはいい事だ。また、この中にケイトもまじって笑いたいな」
「笑いたいなじゃないわ、笑うのよ! 見つけたらとりあえず置いていった罰として一発殴るわよ!」
アリッサの宣言にエルサは苦笑いだ。
「しかし、フレミュリアか」
「あの2人のゴリ押しね、フレミュリアとエボルティアの間でドラゴンの目撃情報があったからドラゴンが見たいなんてね」
「結局は脱線して海に行きたい、か。カルも巻き込んで勢いで決まったな」
「まあ、私達は何処かってのもなかったからいいんじゃない? あ、馬車が来たわ」
世間話をしている間に馬車がやって来た。
「ほら、あんた達、騒いでないで出発するわよ!」
アリッサ達と、ウィンダムの勇者は馬車に乗り込むのだった。
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