第61話 港町1
港町に着いたケイトとミステルトは、今までとは違う港町の活気に圧倒されそうになった。
五大大国は勇者が作った国なのだから、当然日本食が根付いている。
異世界だからパン食だ! と言う訳でもなく普通にご飯が出て来るところには初めの頃はロマンが無いと思ったこともあった。
しかし、海鮮は、鮮度の関係で他の都市で食べる事はできなかった。
海鮮好きは港町に集まり、故に港町は景気がよく、賑やかである。
「主、美味しそうなのじゃ!」
ミステルトの第一声はこれであった。
人型になって、調理された食事を知ってからは、ミステルトは食への興味が爆発している。
港町でも、他の街の様に露店でも飲食が並んでおり、そこから美味しそうな匂いが漂って来る。
これまでの街の肉の焼ける匂いも良かったが、海鮮の焼ける匂いも何とも腹を刺激する匂いだ。
「主、がまんできないのだ!」
ミステルトは先に走っていくと、串焼きを両手に抱えて戻って来た。
「よく分からないけど美味しそうだったのじゃ!」
両手に串をもって満面の笑みで戻って来るミステルトに「慌ててこけるなよ」と、ケイトは必要のない心配の言葉をかけた。
「こっちは主のなのじゃ」
戻って来たミステルトは、両手の串にかぶりつくのかと思いきや、片方をケイトへ差し出した。
以前はこの様な事はしなかったが、ケイトからプレゼントを貰い、プレゼントを渡したツムギが喜んでいるのを見た為か、ミステルトは大切な人から貰ったり、プレゼントしたり、分け合うと喜びが何倍にもなると学んだようで、ケイトと並んで食べたい様である。
ケイトは、串を一本受け取り、ミステルトと並んで串に齧り付いた。
串はバーベキューの様に色々な種類の海鮮が3つ刺さっているものだが、ケイトの一つ目は白身魚であった。
炭火の香ばしい香りと焼けた醤油の香りが懐かしさを感じ、淡白な白身はあっさりと食べられる。
ケイトもミステルトも、感想を言わずに次二つ目に齧り付いた。
二つ目は貝類だ。
噛めば噛むほど味が滲み出てくる懐かしい磯の味。バターが欲しいと思ってしまうのは贅沢な悩みだろうか?
幸せな味を噛み締めるケイトは、ふと横のミステルトを見た。
ミステルトは既に三つ目も食べ終えて口の周りを舐めていた。
ケイトは、その様子を微笑ましく見ながらミステルトに提案した。
「ミステルト、最後の一つ食べるか?」
「ぬ、それは魅力的じゃがそれは主ので……」
などとミステルトは言っているが、目線は串の方を見ている。
「まだたくさん食べないといけないからな、ミステルトの方がたくさん食べられるから手伝ってくれ」
「そうなのじゃ?いいのじゃ?」
ミステルトはケイトから串を受け取ると、嬉しそうに齧り付いた。
武士は食わねど高楊枝と言う程ではない。
これから沢山食べるのも本当だ。
串の最後の味は気になったが、ミステルトのこの笑顔が見れるなら、我慢した価値はあると、ケイトは思った。
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