魔王の覚醒編

第60話 新たな旅路

ケイトはフレミュリアを目指しながら、3箇所のダンジョンを攻略した。


ステータスも上がっている事から、攻略スピードは上がり、時を止めて3ヶ月位あればダンジョンは攻略できてしまう。


特に、ツムギのスキルであった《アダマンタイト骨格》はケイトとも相性が良く、マトイを使わなくても魔力を使って戦える様になり、精密なコントロールが要らない為、最下層の悪魔と時を動かして戦っても楽に勝てる様になっている。


魔法は、キチンと使った事はまだない。


自分の魔力で魔法をダンジョン内でぶっ放した時に、何が起こるか想像できないからである。


しかし、トランフィヴノイズとの相性が良く、弓の形状と組み合わせて属性を付与した矢を放つことができる。


雷を使った魔力の矢は荷電粒子砲の様に打ち出され、ダンジョンの壁に穴を空けたので、それ以降は使っていない。



最下層のアイテムもゲットしたが、使える物は少なかった。


まず、一つ目は漆黒の甲冑。


これはケイトは鎧を装備しないので収納の肥やしとなっている。


二つ目は白いキューブ。


トランフィブノイズの色違いであるが、これは手に持った瞬間にトランフィブノイズに吸収されてしまい、効果は分からなかった。


トランフィブノイズは、吸収した直後は白黒半々になったり、チェス盤の様になったり、グレーになったりと変化していたが、最終的にはいつもの黒に落ち着いた。


そして、今回手に入れたのは黒の王冠。


魔力を無尽蔵に生み出す鍵と言う説明があるが、王冠をかぶっても、何も変わらなかったのでとりあえず収納に放り込んで、地上へと戻ってきた。


この3回のダンジョン攻略を経て、ケイトの変化は、以前と変わりつつあった。


勿論、今までより、期間が短くなったのもあるかも知れない。


アリッサ達の時は帰ってきた時は同窓会で疎遠になった同級生にあった様な感覚だった。


リオ達の時は、まるで他人事のようであった。


その後は、まるで一人暮らしを始めた頃のホームシックの様に、1人が寂しく感じられた。


「主、見るのじゃ!でっかい水溜まりなのじゃ!」


ツムギが去ってから数ヶ月、この数ヶ月で、ミステルトはまたよく笑う様になった。


今は馬車に乗ってフレミュリアに向かう道中、海岸沿いの街へ移動している。


他の街で話を聞いて、海を見たことがないミステルトが海を見たがったのと、ケイトも久々に海産物を食べたかったのとで、遠回りして海に寄る事にしたのだ。


「あれが海だ。水溜まりじゃなくて陸よりも大きい。それに、塩っぱいんだぞ」


「ほえー、凄いのじゃ!早く飲んでみたいのじゃ!」


「飲むもんじゃないぞ?」


「そうなのじゃ?」


ダンジョン攻略で殺伐とした心が、ミステルトの笑顔で、徐々に癒されていくのを感じる。


潮風の香りが漂う道を、馬車に揺られながら港町まで向かう2人であった。






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