第55話 雷魔法

数日が過ぎて、ケイト達は風の精霊が言っていた日にちにまた祭壇へと戻ってきた。


晴れた空から、不自然に祭壇に雷が落ちて、祭壇の椅子に精霊が顕現した。


「「ほほう、人がいるのは珍しいな」」


男と女の声が重なった様な声が聞こえる。


また人と動物を混ぜた様な見た目の精霊で、帯電している様にバチバチと電気が体を覆っているにも関わらず、髪の毛や体毛が逆立っていない不思議な見た目をしている。


「あなた達は毎回こんな派手な登場の仕方なのだろうか?」


ケイトの質問に精霊な難しい顔をした。


「「こうすると人が喜ぶと聞いたのだが、違う様だな。それで、他の精霊に会った事がある?」」


「風の精霊にあなたが来るのは今日だと聞いてきました」


「「わらわに会いに来たのか。それは、嬉しいではないか。して、なんの用だ?」」


雷の精霊は嬉しそうに笑ってそう質問した。


「電気が欲しい!」


「だから、それだけじゃ伝わらないだろう」


ケイトは以前と同じ様に話すツムギの代わりに精霊に目的を話す。


「彼女が雷魔法を覚えたいらしく、あなたの加護が欲しいのです。お願いできるだろうか?」


「「2属性、いや、妾を合わせて3属性の勇者か、面白い。いいだろう」」


雷の精霊が指をパチンと鳴らすとツムギの髪の毛がブワッと逆立った。


そして、瞳の色から赤みが消えて、オレンジから黄色へと変化した。


「「これでお前は私の加護を持った。3属性の勇者よ、頑張るとよい」」


精霊は周りの帯電する電気をバチバチと大きく音を鳴らすと、光の破裂と共に居なくなった。


静寂が訪れた後、ツムギは喜びを表すかの様に握り拳を上にあげて、無言でケイトの方にアピールしている。


加護を貰えないケイトは、その姿が自慢げに見えて、とても悔しかったが、大人だからとグッと我慢して「よかったな」と言って返事を返した。



帰り道、ミステルトがツムギに今更ながらの質問をした。


「そういえばなんでツムギは雷魔法が使いたかったのじゃ?」


ミステルトは、これまで旅の中で、ツムギは戦闘に関しては天才的センスがあり、魔法に頼らなくとも余裕で戦って来ていた。


この世界、ダンジョンの階層王のミステルトにとって、それだけ強ければ、あえて魔法を覚えずとも良いのではないかという疑問であった。


魔法なら、前回の風魔法でもいいはずなのに、ツムギは雷魔法にこだわった。その理由を、ミステルトは聞きたかった。


ミステルトの質問に、ツムギはよくぞ聞いてくれましたとばかりにカバンの中に手を突っ込むと、がさがさと何かを漁って、そして取り出した。


ジャジャジャーン! とでも効果音でも出そうな勢いでミステルトに向かって取り出したものをグイッと突き出す。


「んー? これは、なんなのじゃ?」


ツムギが取り出したのはスマートフォンであったが、ミステルトには理解ができなかった。


「ん、見てて」


ツムギは流行る気持ちを抑えながら両手でスマホを持ってスマホの背面にゆっくりと手を添えた。


「おい、お前が雷魔法にこだわったのってまさか____」


ケイトが言葉を言い終わる前にツムギは雷魔法を使ってスマホを充電した。



パチン! プシュン……


地球では、コードを挿したり、スタンドに置いたりするだけで簡単に充電できるが、電気を安定化して供給するのはとても難しい事だ。


覚えたての雷魔法で勢いよく電力を送ってしまえば、回路はショートして機械は壊れる。


煙の上がったスマホを地面にぽとりと落とし、両手両足を付いてツムギは落ち込んだ。


「か、神は私を見放した!」


森にこだましたツムギの叫びは、この世界に来てからツムギが発した言葉の中で、1番大きい物であった。






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