第50話 神のダメ出し

「やっほー! 元気してる? 魔王様」


「いつもいきなりだな…… それに、なんかいつもとテンションが違うし」


何もない空間で、女神フェルメロウがあざとくテヘッとでも言いたそうに自らの頭をコツンと叩いた。


「様子見に来てあげたのに随分ないい様じゃない?」


「また、何か起こったのか?」


「別になくもないわよ。 でも、あなた、前よりも壊れ方が進んでるわね」


「は? 何がだよ」


フェルメロウは顎に手を当てて、うーん。 と唸る様にして話しをする。


「でも、新しい繋がりもできたのね。 それがあなたを繋ぎ止める鎖になれば良いのだけど… … あなた、ちゃんと唾つけときなさいよ? また魔法使いレベルが上がっちゃうわよ」


「は? そんな事になる様な出来事は起きてねえよ」


「バカね、自分からグイグイ行かないとダメよ! そんなんだからいつまでも童貞なんじゃない?」


「な、」


「いい? 少しでも繋がりを残しなさい。壊れてしまう前にね」


「なんだよ、その壊れるって」


フェルメロウはやれやれと言った風に額に手を当ててため息を吐いた。


「自覚無しか。 あなた、この世界で大切な物はできた? 旅をするのはいいわ。 でも、何も残らなければ、待っているのは○△○□△ ね、魔王様」


フェルメロウがそう言ってニコリと笑うとスゥッと浮遊感があり、目覚めるのだと感覚的に感じた。




目が覚めたケイトは窓から差し込んだ光に顔を照らされて顔を顰めた。


太陽が昇っている感じから昼過ぎだろう。


馬車の都合上、この街で数日過ごす事になっている。


野宿続きなのもあって、この時間までぐっすりと眠ってしまった様だ。


しかし、とケイトは物思いに耽った。


フェルメロウの言っていた様に、自分はこの世界で何一つ手に入れていなかった。


これは、武器や防具といった物の話ではない。


これまで、個人的にはこの世界を楽しんで旅をして来たつもりである。


だが、振り返ってみれば、仲間や友人、何もかも、できた縁を置き去りにしてここまでやって来た。


初めは、この世界を楽しむと共に、友人や恋人などを作って、元の世界では出来なかった卒業も済ませたかったはずなのに。


体の年齢に引っ張られた? それなら、思春期なのだからもっとガツガツ行ってもおかしくない。


フェルメロウの言っていた壊れかけと関係があるのだろうか?


ケイトは考えを巡らせるが答えは出ず、ドアをドンドンと叩く音によって現実に引き戻された。


「あーるーじー、もうお昼なのじゃー。 ご飯を食べに行くのじゃー! 約束してた街をみてまわるのじゃー!」


ミステルトはが合流してから精霊に向かって旅をしていて、街でゆっくりと休息日などとっていなかったので、ミステルトは人の街を見てまわりたいと言って昨日から楽しみにしていた。


本人を知っていれば残念美女ドラゴンなのだが、他人から見ればただの美人で、人の常識に疎いミステルトが1人で出かけるなどトラブルの匂いしかしない。


なのでケイトが引率する約束だった為、楽しみにしながら待っていた様だ。



「今行くよ」


「早く行くのじゃ! ツムギもまだ寝ているし退屈だったのじゃー!」


ケイトはやれやれと言った感じでミステルトと街を散策する為の準備をするのだった。

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