第48話 直進!
「あっちなのじゃ!」
ミステルトの感を頼りに、精霊へ会いに行く旅が始まった。
旅をする中で、ツムギの戦い方も見るのだが、ツムギは、正真正銘の天才であった。
話を聞く限りではこちらの世界に来て誰かに戦い方を習ったわけではない。
にもかかわらず独自の戦い方でモンスターを軽々と倒してしまう。
戦闘方は格闘術だ。
好戦的に自分から手を出す事は少なく、相手の力を利用する戦い方がメインになる。
しかし、場合によっては己から打って出る。
そして、ツムギの戦い方とスキルの相性は特別良かった。
スキル:《アダマンタイト骨格》
アダマンタイトはミスリル等と同じくファンタジーの世界でよく登場する鉱物だ。
この世界でのアダマンタイトは、ミスリルの様に魔力との親和性がよく、そして、ミスリルよりも硬く丈夫だ。
ツムギはこのスキルを無意識下で使いこなしており、ケイトのマトイの様に体に纏わせて戦うのではなく、ミスリルの武器の様に魔力を流して戦っている。
つまり、全身を魔法武器として物理で殴っているのである。
多分、もっと使いこなせば他にもできる事があるのだろうが、自身の身体能力を魔力でブーストして戦うやり方はツムギにあっている様だ。
悔しい事に、ツムギには速攻で《索敵》《察知》のスキルが生えていた。
リオ達の成長を見て来たケイトも、これくらいのセンスとスキルの相性、それに成長率があればリオ達も短期戦闘でゴリ押せたかもしれない。
そんな事を考えながら、ケイトは後ろから飛びかかってきたモンスターに、カウンターで殴り飛ばした。
トランフィヴノイズを使わずマトイで殴ったのは、ちっぽけな対抗心かもしれない。
カウンターを決めたケイトであるが、いまだに索敵系のスキルは覚えていない。
反応したのは隠蔽のスキルリングの隣、親指に嵌められているオートカウンターのスキルリングであった。
スキルリングなんて物はこの地上で知られていない。
ダンジョンの奥深く、勇者が到達できた場所よりも更に奥で手に入れた物だからだ。
ケイトはやはり、本来召喚される人間では無かった為か、スキルの習得が極端に遅い。
今覚えているスキルは武器を扱う熟練度系のスキルで、センスを問われるスキルは覚えていない。
それも、時を止めて何年も使用した上で習得したスキルである。
天才肌なツムギに少し劣等感を感じながらも、ケイトはレベルの暴力で敵を倒していく。
2人の戦い方に対して、ミステルトはファンタジーらしく炎を使って敵をまとめて撃破する。
青銀の髪で火を使うのはおかしいのだが、ミステルトはドラゴンである。
属性などではなく、種族の特性として、まるで忍者漫画よろしく口から火を吐き出しているのだ。
見た目は綺麗な女性が火を吐き出す様は、初めはケイトもツムギも苦笑いであった。
本人は「やっぱり大群をまとめて倒すにはこれが一番なのじゃ」と笑っていたので、見た目の美しさに対して残念さが際立つ。
バラバラな戦い方ではあるが、謎に自然に連携を見せたりもするのはそれぞれのセンスなのだろう。
モンスターを全滅させた後、ミステルトの道案内にケイトが質問した。
「この森の中に精霊がいるのか?」
「いや、もっと向こうなのじゃ!」
3人は今、樹海の中に居るのだが、この森の中に居るのでなければ回り道という選択肢もあったはずである。
「疲れた……」
ツムギは、もともとめんどくさがりもあり、樹海に入ってからの連戦に疲れを見せていた。
「精霊の所まで、真っ直ぐ行くのが一番近いからこっちであってるのじゃ!」
ドラゴンの感覚からすれば、目的地までは、直線距離で向かう物なのだろう。
その言葉を聞いて、ケイトは待ったをかけた。
「ミステルト、森に入る前に向こうに山が見えたのは覚えているか?」
「うむ、覚えているのじゃ!」
「その山の手前に精霊はいるのか?」
「いや、もっと向こうなのじゃ!」
ケイトは察した。ミステルトに任せていては、結局時間がかかってしまう事を。
「真っ直ぐ行くのは逆に効率が悪そうだ。 近くの町に行って作戦を立てよう。 ツムギも疲れてるみたいだしな」
ケイトがツムギを見ると、ツムギは町に行く提案に親指を立ててグットと意思表示を返して来た。
「むう、そうなのじゃ?」
「ああ。ちゃんと説明するから。 とりあえずちょっと待て」
ケイトは、収納から地図を取り出して、色々と確認する。
「多分こっちに町があるな。 町についてから宿屋で話し合おう。 ほら、ミステルト、あとフカフカで寝たいだろう?」
「おお、あのフカフカは良いのじゃ。 町へ行くのじゃ!」
日本のベットに遠く及ばないまでも、そこそこ良い宿のベットは、岩場で過ごしていたミステルトにとって衝撃の寝心地だった様だ。
直線距離をただ真っ直ぐ行くミステルトの案内を考え直して作戦を立てるために、ケイト達はルートを変更して町へと向かうのだった。
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