第47話 旅の目的

町にたどり着いたら。とは言ったものの、その日のうちに辿り着かず、結局は野宿となった。


ケイトだけなら時を止めて歩いてもいいし、たどり着くだけならミステルトに乗って行けばすぐだろう。


しかし、町にドラゴンで乗り付けたらそれこそ大騒ぎで休む暇もないだろうから、歩いての移動を選択したのである。


街道脇の均された場所で、焚き火をして野宿の為の準備をして3人は火を囲んだ。


先程はチラッとステータスを見ただけで、自己紹介もしていなかった為、まずは自己紹介をする事にした。


「俺の名前はケイトだ。コイツの主になったらしい」


「ツムギ……」


「ツムギ、話すのが苦手なタイプか?」


「めんどくさい」


ツムギが頷いてそう話したのを見て、ケイトはなるほどと思った。

特に人付き合いが苦手な訳ではないが、あまり喋らず、友達の話を聞いている様なタイプかな? などと勝手に想像する。


「そうか。ツムギのステータスを覗いたが、勇者なんだろう? 土魔法が使えるみたいだし他の精霊の加護が欲しいのか?」


ケイトは質問しながら一つでも魔法が使えるのに贅沢な、と考えていたのは秘密である。


ツムギはケイトの質問にコクリと頷いて「電気」と答えた。


雷精霊の加護が欲しいのかとケイトは理解した。

雷魔法と言わずに電気で理解できたのは、ケイトが日本人であり、電気タイプと言う言葉を知っていたからであった。


「なんと、ツムギは勇者だったのじゃ?」


ケイトとツムギの会話に反応したのはミステルトであった。

ミステルトは鑑定は使えない様で、野生の勘でなんとなく強さはわかる様だが、自分より強いのか弱いのかだけであった。

過去の勇者でさえミステルトより弱く、今のツムギはそれ以下な為、勇者かどうかなど分からなかった。


ちなみに、ケイトの実力を見誤ったのは、人が自然災害って強いね! と言う様な物で、デカすぎて分からなかった為、普通の人間と同じ対応をしたようである。


「うん……」


ツムギの反応は、素っ気ないものであった。


ちなみに、ケイトのツムギの性格判断は当たらずとも遠からずだが、本来のツムギはもう少し普通に話す。


今は、旅の途中で出会ったミステルトが目の前でいきなりドラゴンに変化した衝撃と、そのドラゴンが主と慕うケイトを前に緊張しているのもであった。


「それで、ミステルトは精霊がどこに居るのかが分かっているのか?」


ケイトはツムギと言葉のキャッチボールが難しいのを理解して、共通の話題である精霊の話をミステルトに質問した。


「うむ!地脈とかいうものの周りをグルグルと周っておるのじゃ! 確か各地に祭壇があったはずじゃがツムギの話では人が知らなかった様じゃし祭壇も廃れておるのかもなぁ。 じゃが、なんとなくなら地脈の魔力だまりは分かるのじゃ! 任せておくのじゃ!」


ミステルトの話はふんわりとしていて要領を得ない話であったが、ケイトはなるほどと頷いた。


勇者召喚の時に日時など条件が細かかったのは地脈を移動した精霊が五大大国にいるタイミングであったのだろう。


そうすると、祭壇の一つは城の中にある召喚の部屋と言う事になる。 石板の話も、祭壇の場所を示しているのだろう。


だとすると、もう一つの場所にも石板がある可能性もある。


ミステルトが、大体の場所を特定できれば、石板を探してみるのもいいかもしれない。


「しかし、何処に雷精霊がいるかは分からんから何箇所か周ってみないといかんかもしれんのじゃ!」


「……頑張る」


ケイトが色々と考えているうちに、ミステルトの話は進み、ツムギは反応が薄いものの、目は気合い十分と言った様子だ。


ケイトは、そんなに雷魔法に憧れるのかと微笑ましく思った。


自分も、できるなら全精霊を巡って色んな魔法を使ってみたい。


この世界では、皆が使える魔法は大体が初級魔法で、威力が低い為に重要視されていない。


牽制の意味合い程度しか学園の座学では習わないのだ。


しかし、ケイトは学園時に、パーティメンバーの魔法で、初級魔法でも実用に足る威力が出る事は実証済みである。


そんな事を考えながら、ケイトの頭にはふと、赤髪の猫少女と黄緑髪の平民の元同級生が懐かしい顔として浮かんだ。

勿論、パーティメンバーだった残りの2人も。


しかし、長い時が経った様に、思い出した顔は一瞬の内にそんな人も居たな位の物へと代わり、すぐに興味は精霊の場所へと戻った。


「それじゃ、これから町に向かわずに直接祭壇を探すか? まあ、途中で見えた町にはよったり、遠ければ町で馬車に乗った方が早いだろうが」


「うん、それでいい!」


ケイトの提案にツムギはやる気十分と言った様にさっきよりも元気に返事をした。


「任せるのじゃ!」


ミステルトも自信満々に胸を張り、これからの行動が決まった。


その後は、ケイトが収納に入れてあった食料でご飯を作り、眠くなった所で就寝した。


周囲の見張りをしなくても、モンスターはミステルトを恐れて襲ってこないし、人が近づいて来ても、ミステルトが気づけるので問題なく3人揃って就寝した。


ミステルトでモンスターがやって来ないならケイトは? と思うかもしれないが、ケイトだと、強すぎて逆に分からないのはモンスターもミステルトと同様の様である。

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