第46話 目的の決定
「主!やっと見つけたのじゃ! 大変だったのじゃ、主の気配は一瞬で何処かへ移動してしまうのじゃ。 追いつくのが大変だったのじゃ」
青色のドラゴン《ミステルト》はそう話しながら嬉しそうに羽をバタバタとさせた。
それに合わせて後ろにしがみついた少女が上下した。
「お、そうじゃ! 主、少し待ってくれなのじゃ」
ミステルトは、そう言うと、着地と同時に光に包まれ、その光が収まった時には長身の美女がそこにいた。
ケイトはツッコミどころ満載の状況に頬がピクリと震えた。
ちなみに、少女は今も無言でミステルトの首にしがみついており、着地したのを確認してヒョイッと地面に飛び降りた。飛び降りたと言っても、ミステルトは人型になっているので飛び降りる程の高さではないのだが。
それはさておき、人型になったミステルトは嬉しそうにケイトに話しかけた。
「どうじゃ、主、驚いたであろう?」
ミステルトは自信満々に胸を張り、そう主張した。
「ああ。他にも色々言いたいことはあるが、お前、メスだったのか」
「主、そこなのじゃ? 普通はお前人の姿にもなれるのかとかではないのか?」
ケイトの驚きが思っていた驚きと違った事に、ミステルトはアワアワとしながら質問した。
「ドラゴンが人になるのは、物語ではメジャーだしそこまで驚くほどじゃないだろ? ドラゴンの性別なんてわからなかったからそっちの方が驚いたよ。 それに、お前、誰を連れて来たんだよ」
ケイトは、そうミステルトに言いながらも心の中では良くやったとミステルトを誉めていた。
褒められた行為ではないのかもしれないが、ケイトはミステルトの背中にしがみついて来た少女を鑑定していた。
【ツムギ】
ステータス
LV27
HP E
MP D
物攻 A
魔攻 A
物防 A
魔防 A
運 D
称号
異世界人 勇者
スキル :《武術》《下級土魔法》《勇者成長率》《大地精霊の加護》《アダマンタイト骨格》
どう言った経緯で連れて来たかは分からないが、ミステルトが連れて来た少女はケイトが探していた勇者であった。
「お、こやつはな、ツムギなのじゃ! 主の新しい配下なのじゃ」
ミステルトは分かりにくい説明を自慢げに話して、少女、ツムギは隣で紹介されたと思ったのかブイ、と右手を突き出した。
ケイトは、どちらかからはきちんとした説明が欲しかったと、ため息を吐いて自分から質問する事にした。
「それで、ツムギさんはどうしてミステルトについて来たのかな?」
「あなたについて行けばダラダラとすごせる素晴らしい国を作ってくれるって聞いた。 あと、精霊に会って魔法を覚えたい」
「いったいミステルトに何を吹き込まれたんだ。 いや、それよりも……」
ケイトはこの状況の説明を置いておいても聞いておきたい素敵ワードを聞いてしまった。
学園の座学では、精霊の祝福は髪の色に現れ、祝福を受けていない人は魔法を使えないと習った。
勿論、黒は全ての色が混ざった色だから全属性! なんて事はなく、ケイトはフェルメロウに貰った時魔法以外の魔法はいくら練習しても使えなかった。
しかし、ツムギの言う事が本当なら、後天的に精霊の祝福を得て魔法を使える様になると言う事だ。
「本当なのか? 精霊にあって魔法が使える様になるなんて……」
ケイトは確認の意味でそう質問した。
ケイトの言葉が、懐疑的に聞こえたのかツムギは不安そうにミステルトを見た。
ツムギは、自身で探して挫折を味わっていた為、藁に縋る思いでミステルトの話を信じてついて来たのだ。
「主も知らんのじゃ? やはり強いと言っても人なのじゃな。先天的素養は大気中に含まれる精霊の力を宿して産まれるのじゃ。 後天的には精霊に会って気に入られれば先天的よりも強力な素養が授けられるのじゃ!」
ケイトにも、普通の魔法が使える希望が宿った瞬間だった。
「それは素晴らしいな、精霊に会いにいこう!」
「おー」
ケイトのワクワクとした声の後に、ツムギの力の無い声が続いた。本人の表情は先ほどと違い少しキリッとしている事から、やる気は十分なのだろう。右手もえいえいおー!と言わんばかりに天に向けて伸ばされている。
とりあえず、目的は決まった。
その他の情報の整理は立ち話もなんなので、近くの町に移動してから落ち着いて話す事にして、ケイト達は移動を開始するのだった。
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