第41話引きこもり勇者の旅立
はぁ、 と少女はため息を吐いた。
少女にとって、最大のピンチが差し迫っているのである。
この世界に来て3日経つのだが、3日前、城を出た少女は、道をスマホでゲームをしながら歩いている時に女性と、その女性に絡んでいた男の間を通り抜けた。
スマホを弄っていたので気づかなかったのだが、男の気に触ったらしく、その男は少女に「待て!」と言って掴み掛かろうとした。
少女は、やはり召喚された為か強いらしく、趣味として習っていた合気道を使って、男を投げ飛ばした。
それで男はのびてしまい、偶然ではあるが、少女は女性を助けた形になった。
どうやら女性は宿屋の娘だった様で、宿泊客の男にナンパされていた様だ。
断っていたのだが、男がしつこく、困っていた所で少女が通りかかったそうだ。
女性は、少女が無一文で行くところがない事を知ると、しばらくは無償で宿に泊めてくれる事になった。しかも、3食付きである。
そして、少女は宿屋に引きこもった。
何をしていたかと言うと、スマホに入っていたオフラインゲームや書籍を読みながら只々ダラダラと過ごして居たのである。
少女は、人付き合いが苦手で、人と話すのもめんどくさいと思っているので、何時もスマホを弄っており、周りをシャットアウトしている。
心配した親が武術をならわせて、礼儀とコミュニケーション能力を身につけさせようとしたが、あまり改善されず、体を動かすのは楽しかった為に武術の腕だけは上がった。
しかし、根は引きこもりの少女は何時間でも引きこもってられる。
ありがたい事に、3食は提供されるのだから。
そんな彼女に最大のピンチが訪れていた。
それは…
ついに、カバンに入っていた大容量モバイル充電器3つを使い果たし、スマホのバッテリーも20%の警告表示が出たのである。
電気のないこの世界では、スマホを充電することはできない。
この引きこもり生活も終わりを迎える。
いや、引きこもることはできるだろう。
しかし、趣味の無い引きこもりなど、少女にとっては苦痛なだけであった。
とりあえず、現実逃避する為に食事にでも行こうと、借りている部屋を出て、少女は食堂へ向かった。
「うわっ」
少女は食堂へ来たことを後悔した。
いつもは閉店ギリギリの時間に来る為にガラガラだが、今の時間帯は冒険者達が帰って来て酒盛りをしているらしく、食堂はごった返していた。
少女が引き返して後で来よう。 そう考えていた時に店員に気づかれ、相席で席へと通されてしまった。
仕方なく、いつも頼んでいる食事を注文する。
異世界のご飯は意外と美味しい。 まぁ、このシチューとパンしか食べてないのだけれど。
相席になった冒険者は今日の成果を肴に酒を飲み盛り上がっている。
「まさかあんな所でガノウメルブが居るなんて驚いたぜ!」
「だけど俺達は生きて帰ってきた!」
「そうさ! それもコイツが魔法を使えたからだ!」
「ああ! 俺も魔法なんて物は使えないと思っていたが、武器を落とされて何も出来ないから神頼みで使ったんだが、当たった途端ガノウメルブが動かなくなりやがった! 雷の精霊様に初めて感謝したぜ! 髪が黄色くて良かった!」
「だから、俺達は逃げられた! 魔法なんて、使った事もないコイツが…」
大分酔っているのか同じ話が度々繰り返される。
近いので嫌でも話は聞こえてくる。
話はデカい魔物を倒したとか、強い魔物を倒したでは無い。『逃げられた』である。
強い魔物から奇跡的に逃げられたと言う武勇伝である。
電魔法によって痺れ、動きが止まったようだが冒険者達は理解していないみたいだ。
しかし少女はその話が物凄く気になり食べるスピードをいつもよりも抑えて聞き耳を立てていた。
雷魔法。
つまりは電気である!
12
私のスマホは置くだけで充電できるタイプである。
なら充電器が無くとも(持ってはいるが)手で持っているだけで充電できるかもしれない
それが少女の見た光明である。
しかし、その後の話にどうすれば魔法を使えるか等の話はなく、ゆっくりと食べた成果は見られなかった。
しかし、これからの行動は決まった。 電気を手に入れる事である。
翌日、1日かけて魔法について聞いて回ると言う行動力を見せた少女であったが、分かったことは少なかった。
1.魔法を使うには精霊に加護を貰わないといけない。
2.精霊に加護を貰うと髪の色が変わる(属性色と呼ばれる)
3.この世界では魔法使いとは特別なポジションであり、戦闘に使えるレベルとなると王宮お抱えレベルの人しかおらず、詳しい所は不明
まぁ、加護を貰えたら属性の魔力が使えるみたいである。
ちなみに自分のステータスを確認した所、自分には加護は地属性が着いていることがわかる。
何故雷属性じゃないんだと自分を恨むが、加護をもらいに行けばいいだけの話だ。
こうして、少女の旅は始まった。
ちなみに、彼女のスキルはと言うと。
《武術》《下級土魔法》《勇者成長率》《大地精霊の加護》《アダマンタイト骨格》
さて、彼女の旅はどのような物になるのか?
それは誰にも分からない。
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