第34話龍の祠
龍の祠。
村よりもさらに山を登った頂上にある洞窟。
その周りには
立ち入ることが許されるのは供物を備える龍の巫女と呼ばれる女性ただ1人だけらしい。
昔、この村を訪れた
「本当に、行かれるのか?」
言葉を発したのは村長。 あの場で上座に座っていた男だ。
あれから数日、龍の祠の話を聞いたケイトはリオ達にしばらく休むと告げでまたここへ戻ってきた。
森の浅い場所では、ケイトのサポート無しに安全に狩りを出来る実力はついてきていると思う。
レミントが予測可能な範囲に動けば、と言う条件は付くだろうが…
それはさておき、今から龍の祠へと向かう。
ドラゴンは倒した事があるから心配はしていないが、不測の事態を考えて時を止める準備さえしておけばなんとかなる。
一撃で死ぬ事態は
「はい、まぁなんとかなりますよ 」
こうしてケイトは山を登って行った。
村が見えなくなり、山道を歩くケイトを遠巻きにドラゴン達が睨みつける様に見ている。
歩いて来た荒れた山道から、レンガで舗装された整えられた道へと変わった。
その境目をケイトが踏み越え、足がレンガに触れたその時だった。
遠巻きに見ていたドラゴン達が一斉に雄叫びを上げた。
縄張りに入ったケイトを威嚇したのだ。
それに構わずにケイトはまるで散歩でもしている様に、軽い足取りで歩き続ける。
ケイトは攻撃をしてこない限りこちらから手を出さないと決めていた。
それは、先に手を出せば過去の魔王と同じ様に己の種族以外を滅ぼす様に思えたからだ。
悠然と歩くケイトの前に、青色のドラゴンが翼を広げて降り立った。
『人がこの地に何をしに来たのじゃ?』
ケイトは驚いた。
学園にいた頃に読んだ本には、ドラゴンは魔物だから言葉は発しないと書かれていた。
この間のドラゴンはそんな暇もなく殺してしまったが、これまで魔物が話したところに出会いもしなかった為、本の通りだと思っていた。
「驚いたな。ドラゴンが喋るなんて」
『人よ、我は44層の住人であるが、同族が1階層に迷惑をかけないようにここへ出向いておるのじゃ。 …と言っても分からぬか? この先にある祠は人の身に余る。引き返すが良いのじゃ』
ドラゴンの言葉に、ケイトは祠の正体に気づいた。
「ではこの先にはダンジョンが?」
『ぬ、お主は我の言葉の意味が分かるのか?』
「まあ、貴方が分かるかは分からないが、これで証拠になるだろうか?」
ケイトは、立方体の状態でトランフィヴノイズを取り出した。
それを見て、周りのドラゴン達は一斉に鳴いて威嚇しだした。
『静まるのじゃ!』
青色のドラゴンが一喝した事により、ビクッと身を震わせて周りのドラゴン達は声を押し殺して身を寄せ合った。
青色のドラゴンはまるで平伏するかのように頭を下げるとケイトへと話しかけた。
『
「一国の主?」
『はい。 1階層の言葉で言うならダンジョン覇者とでも言いましょうか。 各階層で呼び名は違いますが、世界の最深へたどり着いた者の事を言います』
ケイトは、青色のドラゴンの言葉になるほどと頷くと、ふと思った事を口にした。
「なら、最下層の1つ上の種族が一階下りれば覇者になるのか?」
『いえ、
質問するつもりもなく口から出た疑問だったが、青色のドラゴンは丁寧に説明してくれる。
『1塔の覇者よ、祠へと向かうのか?』
「そうだな。目的の一つにダンジョンをクリアして魔力を確保する事もあるから、攻略してしまうのが望ましいな」
『そうか。 我は過去の1階層に居た勇者や魔王よりも強いと自負しておる。 しかし、我でも最下層は無理であった。 いや、1塔の覇者に失礼じゃな』
青色のドラゴンはケイトは言葉に自問自答し何か納得した声を出した。
『それでは人よ、祠を踏破した暁には我はお主の配下へと降ろう』
青色のドラゴンがそう高らかに叫ぶと集まっていた他のドラゴンが隊列を組み、祠へ向かう道を作った。
さて、2度目のダンジョン攻略が始まる。
次は何年で帰って来れるかな?
ケイトはそんな事を考えながら祠に入って行った。
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