第32話許可証
エボルティアを目指すケイト達は今、ズイール伯爵領の端にあるとある街にいた。
街の名前はハスアマと言う。
レミントの提案で、ズイール伯爵領を通っているのには理由があった。
ここハスアマはアクアリアのモンスター防衛最前戦の街である。
その先に広がる樹海には、これまでの街道とは違い、国が力を入れて防衛するほどのモンスター達が住んでいる。
なのでこれまでのモンスターよりもレベル上げの効率が良く、
宿を取って荷物を置いた後に、再集合して冒険者ギルドへと向かう。
樹海に入るには、冒険者ギルドの許可が必要である。
先程も言ったが樹海のモンスターはこれまで街道に出たモンスター達とは違う。ギルドの管理が無かった場合、街道で経験を積んだからと言って、調子に乗った冒険者が無謀にも樹海に行ってしまい、命を落とすと言う事が多かった。
なので初代の国王、つまり過去の勇者達は各国の樹海付近のギルドに樹海の管理を任せたのである。
だから樹海へと入るには冒険者ギルドで許可を貰わねばならない。
それに、もし何かいいクエストがあれば一緒にそのクエストも受けてランクアップのポイント稼ぎもしようと思っていた。
「本日はどんなご要件でしょうか?」
「うむ、樹海へ入る許可をもらいに来た!」
「かしこまりました。では、冒険者タグの提示をお願いします」
受付嬢に言われてリオ達は冒険者タグを機会にタッチして情報を読み込ませた。
「あ、ちょっと待ってください。仲間がもう1人いるんです!」
「でしたら、その方のタグも後で確認させていただきますね」
「奴も俺達と同じランク位だ。それで構わないか?」
「いえ、規則でキチンと確認が必要ですので…」
レミントが無茶を言うが、冒険者ギルドとしても許可するわけにはいかない。
受付嬢が苦笑いで返答するのを聞いてレミントはため息をついた。
「チッ、アイツはどこに行ったのだ!仕方ない、俺達は先に準備しておくか。 後は頼んだぞ、リュクス」
そう言ってレミントはズカズカと、トモヤはその後を着いて外へと歩いていく。
「リュクス、私達も一緒にケイトをさがしにいこうか?」
「大丈夫。ケイトもクエストを見たら直ぐに来るって言ってたし。 でもゴメンね。 兄様がいつもあんな感じで…」
リュクスの言葉にリオとアスカはもう慣れたわ。と肩をすくめて苦笑いを返した。
3人はクスクスと笑って、リュクスはこのままケイトを待ち、リオとアスカの2人は先に準備をする為にレミント達を追いかけて行った。
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この冒険者達では単独での樹海の入場許可は下ろせないな。
受付嬢は先程の冒険者達から提示された冒険者タグのデータを眺めていた。
全員が初心者である冒険者ランクH。そうなると樹海に入るのは自殺行為だ。
冒険者になったからと言ってそれだけで強くなる訳では無い。
経験を積んで地道にランクアップし、実力を付けていくのだ。
先程、討伐記録も確認したが、ランクアップには満たない。
1番浅いエリアでも平均でFランクのパーティでないと入場許可は下せない。
誰か
「すいません、冒険者タグの提示はここで合ってたでしょうか?」
物思いに耽っていた受付嬢は声をかけられてハッと顔をあげた。
「はい、合っていますよ。 先程の方達のお仲間ですね」
まだ子供じゃない。この子はしっかり守ってもらうように頼んでおかないとね。
いや、子供なら立ち入り禁止にしたほうがいいのかな?
受付嬢は冒険者が帰って来なくなる事も何度も見ている。
子供なら、普通のHランク冒険者よりも危険度は高いだろう。
しかし、受付嬢のそんな考えは冒険者タグを読み込んだデータを見た途端にぶっ飛んでしまった。
「
「何か問題がありましたか?」
少年の言葉で、自分の失態に気づいた受付嬢は気まずそうな顔で少年の顔を見るが、少年は何も気づいていないように微笑んでいた。
受付嬢はこのランクの引率があれば問題ないだろうと、急いで樹海へ入る許可証を用意して少年に渡した。
「 貴方の引率があるとは言え、Hランクの方々ですので、この許可証で入ることが出来るのは浅めのエリアのみです。
お仲間のランクアップの為に良いクエストを探しましょうか?」
「一応コレは見繕ったんだけど、受理してもらえる?」
受付嬢はクエストの書類にも目を通すとうんと頷いた。
組み合わせも考えられていて、上手くいけば普通より早くランクが上がるだろう。
コレならば問題ないですね!そう太鼓判をおせる内容だった。
「はい、確認しました。 ご存知とは思いますが討伐記録や素材でもランクアップの査定に繋がります。 では、お気を付けて行ってらっしゃいませ」
受付を済ませて、仲間の少女と一緒に先に出て行った少年を見送って受付嬢は「ほうっ」と溜息を着いた。
Dランクの冒険者はよく見る。Cランクも中にはやってくる事がある。
しかし、Bランク以上はダンジョンの方へ行く為にやって来ることはまず無い。
強さも、計り知れず、Aランクと言えば雲の上の存在だ。
あの少年が付いているなら初心者集団でも無事に帰って来るだろう。と安心して、受付嬢はゆっくりと業務へと戻るのだった。
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