第25話旅のメンバー
「それで、私達はなぜ呼ばれたのかしら?」
帰れない事にショックを受けなかった自分の驚きを隠す様に私は国王に質問した。
筋骨隆々とした見た目の国王になんの恐れもなくこんな質問ができる事も不思議な感覚だ。
「魔王の顕現が石板によって知らされ、世界は滅びの危機に直面していると言える。
その為、伝承によって伝えられている通りに勇者召喚をさせてもらった」
「それで、私達に魔王を倒してくださいって訳?」
「うむ。 危機とは魔王に限定はしない。 未知の危機も救って貰いたい」
「未知の危機?」
「元々、召喚された勇者であった初代国王達は旅をし、旅の途中で絆を作り、そして旅の途中で起こったトラブルを解決して、今の平和があると伝わっている。
勿論、魔王を倒したと言う話もあるが、生涯をこの世界で過ごしたと伝わっている。なので貴方達にも旅をして貰い、この世界を平和へ導いてほしい」
今度は立ったまま頭を下げる国王に私はため息を零す。
目的の無い旅をさせようと言うのか? と問いたい。
今の話だけではまるで仕方なく呼び出した様に聞こえる。
「父上、魔王を倒してもらいたいとちゃんと頼むべきではないですか?その為に呼び出したのでしょう!」
先程も国王の話に横槍を入れてきた男がまた口を挟んできた。
さっきの高圧的な態度もあってあまりお近づきになりたくない人種だけど、この話にはハッキリと言って貰えるのはありがたい。
「しかし…」
「私達も目的の無い旅はゴメンだから、取り敢えず魔王を倒す為に力を蓄える旅と言うことで良いんじゃないかしら?」
私もとりあえず目的が欲しいので提案する事にした。
この国王は魔王との対立を避けている様に思える。しかし、弟達が好きでやっていたゲームやアニメの導入の様な状況だと考えるとこの提案が最適解だろうと思う。
私も異世界には興味をそそられるし、勇者と言われて悪い気はしない。
私の提案を受けて、話はトントン拍子に進みんでいき、私達と旅をしてくれる3人が紹介される事になった。
その前に、勇者である私達の自己紹介を周りにいる貴族達にする事になった。
なんか、部活の壮行会みたいだ。
ステータスを確認してしながら名前を言って自己紹介していく。
私、アスカに、えっとハシモト君? ステータスには名前しか載ってないから名前しか言ってないけど確かハシモト君だったと思う。
ステータスによれば私以外は巻き添えだったみたいだけど、アスカは「リオちゃんと一緒なら」って言ってくれたし、ハシモト君も了承してくれた。
召喚される前に声を掛けられた程度の知り合いだし、ゲームとかマンガとか好きそうなことはクラスメイトだから分かるけど、だから異世界も楽しみなのかな?
とりあえず不満は出ずに旅が出来そう。
あ、そう言えばハシモト君は召喚される前の下校中に声を掛けてきたけどなんの話だったんだろう?
まぁ、この状況だから有耶無耶でもいいわよね。こんな状況だし。
私がこんな事を考えている間に格式張った同行者の紹介がされていく。
王子のレミント・アクアリア
続いてリュクス・アクアリア
この2人はアクアリアの苗字だから王族だろう。
あの王子は関わりたくなかったけど、同行者なのか。
お姫様は鎧を来ているし姫騎士なのかな?
その流れで、最後の1人が紹介されたのだが、最後の1人に他の貴族からものいいが入った。
一体どういう事だろう?
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「では最後の1人を紹介する。 ケイト・クロノグラフである!」
ケミルトの言葉で貴族達は驚きでザワザワとしはじめる。
そして、ケミルトに質問をする貴族も出てきた。
「陛下、クロノグラフと言う家名は聞いた事が無いのですが?」
「それはそうだろう。 クロノグラフは勇者達に同行する為の秘密の家系だ」
「しかし、その様な得体の知れない者を勇者様に同行させるのはいかがなものかと。
武勇にはシャリオン家も秀でておりますゆえ、我が息子に交代させた方が良いかとおもいます。レミント王子とも仲がよろしいゆえ」
シャリオンと名乗った貴族を皮切りにあちらこちらで我が息子をと手が上がった。
娘を押す声がないのは思惑があるからか、それとも物語の様に貴族の女性が戦うことはないのかな?
そんな事はないだろう。
ウィンダムで見た様に、この国にも国営の学園があるはずだ。
「初代国王より侯爵の家名を頂くも使命に忠実に表へと出なかった由緒ある貴族を得体の知れないと言うか?」
ケミルトの低く放った言葉に周りが押し黙るも、内心1番驚いているのはケイトであった。
え? 侯爵? って上位貴族じゃないですか?
打ち合わせではリュクスを助けた名誉騎士爵で共に旅をさせるのに適しているから叙爵したのではなかっただろうか?
それが古くからある名家とはハッタリもいい所だ。
ケミルトの方を見るとコチラをウインクして笑って居るのが見えた。
そんな事をすればバレるのではないか?
ともおもったが、意義を唱える貴族はいなくなった。
初代国王はやはり偉大なのだろうな。
盛大に発表した後、貴族達は退室していき、部屋にはケミルトと宰相、旅のメンバーである6人が残った。
「それでは勇者様方には国より支援として武具を送らせて頂く。 宝物庫へとついてきて頂きたい」
宰相はそう言って召喚者を伴って宝物庫へ案内して行く。ケイトも宝物庫を散策してみたかったので一緒について行った。
部屋へ残ったのはケミルトとレミントであった。
「父上、私もあの様な家名の貴族は知りませんが?」
「当然だ。
王位を引き継ぐ時に話す話だからな。
クロノグラフ卿に変に手を出そうなどと考えない事だ。
卿がコチラを見限れば国が滅ばぬとも限らん」
「父上にしては面白いジョークだ!
まぁ肝に銘じておきますよ。 私も宝物庫の物を使用して良いのでしょう?」
「それは無論だ」
「では父上、勇者と一緒にアクアリアに更なる繁栄をもたらしてみせましょう!」
そう言って宝物庫へと向かったレミントを見てケミルトは手の平で目を覆って深いため息を着くのだった。
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