第21話女神の啓示
ガタン、と馬車が揺れた。
これまでに乗ったどの馬車よりも揺れが小さく、乗り心地の良い馬車なのだが、
そんな中、ケイトは正方形のパズル玩具。ルービックキューブをそれを組み替えながら周りの視線に耐えていた。
チラリと目を右に向ければ目を輝かせてケイトの手元を見る少女がいた。
そして、周りにこの状況を快く思わず、監視する様にケイトを睨む騎士達の視線。
どうしてこの居心地の悪い状況でも時を止めて逃げ出す事なく、この状況に甘んじているかと言うと時を遡って話さなければならない。
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「お休みのところ失礼するわ。久しぶりね」
見覚えのある白い空間で女性の声で話しかけられた。
「久しぶりだな、今回は何の用だ?」
「もう、そんな邪険にする事ないじゃ無い。
私はあなたの為にわざわざ来てあげたのよ?泊圭人」
「こないだは話の途中で放り出されましたからね。こんな対応にもなりますよ。フェルメロウ」
「あら、私の名前覚えてくれたのね。嬉しい!」
疑いの目の事など気にした様子はなく名前を呼ばれた事に喜ぶ女神フェルメロウにケイトは溜息を吐いた。
「幸せが逃げるわよ?
じゃあそろそろ本題に入りましょうか魔王様?」
「何のことだ?」
女神にいきなり魔王と呼ばれたケイトが訝しげに質問した。
「あなたが第1層において最強の魔物になったと世界が理解した証よ。 魔王認定って言うの」
「第1層? 魔物?何のことだ」
「それにしても、超級火炎魔法程度で
超級火炎魔法なんて精々ダンジョンの半分も行けたら十分なのに、しかも転移してからそこまで時間も経ってないし他のスキルもそこまで強くないでしょ?
どうやって身体は鍛えたの?
第1層てそこまで成長できないはずだけど、それに____」
「おい、話を聞け。どう言うことだ?」
一際大きな声で発したケイトの声にビクッと反応したフェルメロウはニコリとケイトの方に顔を向けた。
「コホン。それで、何から説明してほしい?」
フェルメロウは咳払いをしてかけてもないメガネをクイっと上げる素振りをしながらケイトに聞いてきた。
「まずは超級火炎魔法ってなんだ?」
「何って私が貴方にあげた魔法じゃない。
私は神級火炎魔法が使えるから超級とかは使わないからあげたでしょ?
そもそも天罰とか落としたことがないから神級も使わないもの」
「俺が貰ったのは時魔法だが?」
ケイトの返事にフェルメロウは目を見開いて驚くと、自身の目に力を込めてケイトを見た。
「生意気にも隠蔽してるじゃない。えい!
あー、ホントだ。 でもよくこれで世界を制覇できたよね」
「どう言う事だ?」
「だってこの魔法は世界の時を止めるだけの魔法でしょ?確かに神である私だけの魔法だったけど世界を作って以降使ったことないし」
フェルメロウはとても驚いている様だ。
ケイトはフェルメロウにこれまで時魔法をどうやって使ってきたか説明した。
時を止めている間は使用者以外は神さえも止まっている様で、フェルメロウは色々と大袈裟なリアクションを取りながら聞いていた。
「なるほどね。 間違えて渡しちゃってたみたいだけど楽しんでるみたいでよかったよかった。
それでね、本題なんだけど________」
「ちょっと待て、まだあるだろう。
俺が魔王ってなんのだ?」
「第1層で最強の魔物に与えられる称号よ。
貴方がこの世界に認められた証でもあるわ」
「第1層の魔物?俺が? 」
「そこからなの?魔物は魔力を持つ生き物の総称でしょ。その王様で魔王」
「じゃあ第1層ってのは?」
「第1層は貴方がいた所でしょ?
色々な魔物が入り乱れてる特殊な箱庭。
種族毎に分けて作ってたんだけど途中でめんどくさくなったから残りを全部入れちゃっただけなんだけどね。
だから普通は種族の王だけど第1層は魔物の王で魔王」
「ちょっと待て。お前が言う第1層って…」
「ああ。人族は勝手に地上って読んでるわね
神が人だけを特別視してるなんて人の勝手な妄想でしょう?
私は私の作った世界に対して平等よ」
フェルメロウによると、この世界自体がダンジョンになっているらしい。
あの白い部屋から始まって順番に積み上げる様に世界を作ったのだとか。
最後が地上。
「第1層の種族の王。魔王は力に任せて、自分の種族を優遇して他を虐げたわ。でも、それって多種族が集まれば普通の事だわ。
当時の人族達は結束してその魔王を倒す事を決めた。
その時から、魔王は倒すべき人種族の敵になったわ。
そして魔王を倒す為に試行錯誤の上に使われた力が勇者召喚。 異世界から、高濃度の魔力を使って強力なスキルを焼き付けた人間を呼び出す方法。
魔王が生まれた事によって地上に溢れた魔力を消費する力を応用した法則を捻じ曲げる方法
それを神の救いだと誤認しているの」
一旦間を置いてフェルメロウはケイトへゆっくりと告げる
「そしてこれからが私が来た本題。
ケイト、貴方が魔王認定された事で条件が揃ったわ。
勇者召喚が行われ、魔王狩りが始まる。
気づかれたら、貴方は第1層の魔物達の獲物になるわ。
気をつけなさい、私はその事を伝えに来たの。あなたは私のお気に入りだから」
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