第12話アドバイス

キースとエリーゼは迫り来るモンスターの群れを1匹たりともケイト達の方に通す様なことは無かった。

2人との実力差にケイト達は邪魔をしない様に見ていることしかできなかった。

たった数年の学年差でここまで違うものかと思わせられる。


モンスター寄せの効果が切れてモンスター達が現れなくなると、キースとエリーゼはケイト達の方にやって来て、今回の戦闘について一人一人にアドバイスをしてくれる。

それぞれ、今後の課題をいくつも言われた。

このチームがこれからちゃんとしたチームになる為の的確なアドバイスで、皆、直近の目標ができたようでもあった。


アドバイスが終わると、小休止を挟む事になった。帰り道はまた街道沿いに歩けばあまりモンスターともあわないだろうが、もしもの時の為に、疲れは取っておいた方がいいとの事だった。


小休止をの間に、ケイトはエリーゼとキースに呼び出された。

他のメンバーは木陰に休んでおり、4人で話し始めたのを見てケイトは顔を綻ばせた。

貴族だからと緊張していたのも先ほどの戦闘で少しマシになったようだし、エルサもつんとした雰囲気が少し取れて会話に入っていっているのも嬉しかった。

ピンチを乗り越えた経験と、先輩のアドバイスで打ち解けるチャンスだろう。

女の子だけで集まっていると言うのもあるかもしれない。


「わるいな。休憩の間に呼び出して」


キースの言葉に、ケイトは背筋を伸ばしてキースとエリーゼの方を向いた。


「話というのはな、最後に使ったやつのことだ。 基本アレの使用を禁止する」


「え?」


ケイトはアレが何を指しているのか分からなかった。時魔法がバレたと言う事は無いはずだ。


「キース、それだけじゃ伝わらないでしょう。

ケイト、 貴方の12歳という成長過程の体にはあの技は危険すぎるわ。

魔力を体や武器に流す戦い方をする人は熟練の冒険者や騎士の中にはいるとは聞くけれど、隠し球みたいなもので、 実戦向きとは言いづらいわ

体に負担が大きく、その後の戦闘が不利になる」


どうやらケイトの時魔法による攻撃を体に魔力を流して身体能力を爆発的に高めた物とを勘違いした様である。


「いや、怒ってるわけじゃないんだ。お前がその技術を持っている事には正直驚いたし、あの状況、仲間のピンチでは使うべき状況だった。

しかし、負担は大きいだろう?体は大丈夫か?

指導中なら俺たちがフォローしてやれる。だから使うな。

それに、普通の武器では魔力に耐えられない。そうだろ?」


キースの視線は腰に差したケイトの剣に注がれていた。

ケイトは知らないが、剣が折れるのではなく、粉々に砕けるのは魔力を流し込んで耐えられなくなり、自壊した時の特徴なのだ。

それを防ぐ為、魔力を武器に流す場合にはダンジョン産の特殊な物でないとならないとされている。


「まあ見ている限り大丈夫そうだがな。

もう一つ言えば、お前は魔法スキルがないだろう? って事は魔力も必然的に低いって事だ。

仲間を助けても、魔力枯渇で動けなくなってしまえばどのみち終わりだ」


常識的に魔法スキルが無い者の魔力量は少ない。

ケイトの場合、隠している時魔法がある上、日本の都市伝説の証明で、最上級に魔力が多いのだが、それは今は置いておこう。

キースの言葉にケイトは黙って頷いて、続きを聞いている。


「お前は、今後どうなりたいと思っている?」


「どうなりたい。ですか?」


「ぼんやりしててもいい。 エリーゼなんかは2年前からずっと七風花セブンナイツになると言っているし、俺はSランク冒険者になると目標を立てている。

お前は、将来何をしたい?」


「なら、俺は世界を旅したいですね」


ケイトの答えにキースとエリーゼは予想していなかったと苦笑気味だ。

この質問をされた12歳の新入生子供は冒険者の最高峰や騎士の最高峰など、途方もない物が多い。

夢はでっかく。はとてもいい事で、それを目標にする分道筋がはっきりしている。


それに引き換えケイトの言葉はどうもふんわりとしている。

勿論、冒険者でも旅はできる。

しかし、世界を旅するなら商人などでもいいだろう。


「つまりお前は騎士になりたい訳でも冒険者として上を目指す訳でも無いと?」


「でも、世界を見て回るのにダンジョンも入ってみたいですから、ダンジョンの入場許可が出るランクBの冒険者にはなりたいですね」


ケイトの発言は全て旅の目的がベースになっている。

キースとエリーゼはこれまで同級生の仲間や、先輩達の夢も聞いて来たが、なりたいものではなくしたい事を言った人は初めてだった。


「ならとりあえずはBランク冒険者が目標だな」


「ふふ、まあダンジョンに入りたいならまずはそれでいいでしょうね。

それまでは体を壊していられないわよ」


この質問をしたのは、それを引き合いに出して無茶をさせない様にする為だったのだろう。


しかし、ケイトにとってラッキーだったのは、よく似た現象で時魔法について勘ぐられなかった事だ。

やはり、隠蔽効果のあるアイテムを早めに手に入れたいと思った。


小休止を取った後は学園へ戻るまでトラブルは無く、そして解散となった。




翌日、本日は外には出ずに学園内の修練場にての訓練であった。

1週間の内3日を学園内での訓練、2日を外での訓練。残り2日は学園が休みの為自由時間という割り振りである

学園内での訓練が多いのは、外での訓練が多いと緊張が続き。集中力が散漫になって危険だと言う理由だ。

ちなみに午前は基本座学の為、こう言った訓練は午後からである。


訓練は自分がしたい戦闘スタイルに合わせて指導を受ける。

使いたい武器などの指導を受ける事でその武器のスキル習得の為のアドバイスなどももらう事ができる。


アリッサは剣術スキルの上位スキルの1つ細剣レイピアスキルの習得を目標に。

エルザも、カルも、ミリィもそれぞれスキルアップの為に指導を受けていた。


ケイトは、1人離れたところで弓を引いていた。


支給された剣が壊れてしまった為だ。

普通、貴族でも無い限り学生から武器がポンポンと買える訳でもない。

だから始めに支給されるのである。勿論、ケイトは以前のゴブリンの金がある訳だし、すぐ買えるのだが、どこからそんな金が出てきたと言われても面倒だ。

なので、しばらくは持っていることを伝えてある弓での特訓をする事になった。

剣はまた支給されるらしいが、すぐ支給されると、ポンポン壊す馬鹿もいる為、ペナルティ期間があるようである。


ケイトも、弓は特訓したかったので、集中して打ち込んでいる。

訓練所なら。矢は使い放題な為、とことん訓練できるのもいい所だ。

こうして、学園生活は過ぎていくのだった。

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