第4話ギルドマスターとの話
町へと帰ってきたケイトは、そのまま真っ直ぐに冒険者ギルドへと向かった。
冒険者ギルドのドアを開けて中へ入ると、周囲からの視線を感じた。
すぐに興味を無くしたようで、すぐに視線の数は少なくなっていった。
「君、大丈夫かい?」
そんな中、ケイトに声をかけてくる人がいた。
腰まで届く赤いポニーテールが特徴的な長身の女性だった。
身長よりも長い槍を肩で支える様にして持っている事から、彼女も冒険者であろう。
女性は、ケイトの体を上から下まで心配そうに見ながらそう聞いてくる。
「ローザ、そんな死にそうなガキはどうだっていいじゃん。早く酒場に行こうぜ」
「アザレア! 君、すまないな。彼女も悪気があるわけではないんだ。
アザレア、彼は無傷みたいだ。
この血は返り血みたいだから私たちよりも実力があるかもれない。
まぁ、私の心配のしすぎだったのはたしかだな」
そう言ってローザはケイトに向かってウィンクした。
ローザに声をかけ、俺に興味なさげに通り過ぎようとしていた少女はアザレアと言うらしい。
ローザと同じ髪色の中学生くらいの少女だが、酒場に行くと言う事は酒を飲める年齢なのだろうか?
「ケイトさん、血まみれじゃ無いですか、怪我は大丈夫ですか?」
受付から、慌てた様子でケイトの担当受付のリーアが駆け寄ってきた。
ケイトが血塗れなせいで慌てている様子だ。
「どうせその辺のウルフでも倒してきたんだろ?
なぁ、もう酒場に行こうぜ。腹減ったよ」
「リーア、慌てなくても彼は血塗れだが怪我一つして無いみたいだぞ?
しかし、リーアは彼にご執心か? 確かに顔はいいがリーアが年下好きとは、いや、何でもない」
ローザはリーアをからかって「くっく」と声を抑えて笑った。
「担当の冒険者が血塗れだったら心配くらいしますよ」
リーアはローザにそう返しながらケイトの体に本当に怪我が無いか確認して行く。
リーアは
しかし、ローザは顔がいいといっていたな。
どうやら女神が言っていた言葉は本当らしい。 卒業に向けての希望がでてきた。
などと考えていたケイトにリーアがなぜ血塗れで帰ってきたのかと説明を求めてきた。
ケイトはモンスターを倒してきた事を意気揚々と話をする。
しかし、リーアは疑いの眼差しだ。
登録したばかりのHランクがモンスターを倒しできたと言えば、疑うのも当たり前だろう。
リーアに話を袖にされたローザはつまらなそうに挨拶をして酒場の方へと向かって行く。
アザレアはやっとかといった雰囲気でローザについて行った。
とりあえず、討伐報告の為に受付へと通されたケイトは、リーアにモンスターを倒した状況をたずねられる。
ケイトは、時魔法の事は伏せて北の森でゴブリンを倒して来た事を伝えて、倒したゴブリンから取ってきた耳が大量に入っている袋を受付のカウンター上に取り出した。
報告を疑っていたリーアだったが、袋の中を見て、慌てた様子でケイトにここで待つ様に伝えて何処かへ行ってしまった。
アニメなら、ケイトの頭の上にピコンと電球が光だろう。
ギルドマスターが出てくるに違いない!
よくある展開にケイトは心躍らせながらリーアが戻って来るのを待った。
リーアが戻ってきて通されたのは、やはりギルドマスター室であった。
厳ついおじさんがデスクに座っており、多分この人がギルドマスターだろう。
「君がケイト君か。
少し聞きたい事がある。本当にこれを君が倒したのかな?」
どうやら疑われている様だが、真実なのだから自信を持って頷いた。
それを見てギルドマスターはふむと頷いて顎を撫でた。
「初めに、私はこのギルドのギルドマスターでレンヴィルと言う。
すまないが、君の言葉をはいそうですかと信じる事ができない。だってそうだろう?
君は登録したてのHランクで、登録の時にラFランクの冒険者に一撃で気絶させられたと報告を受けている。
それは今日の昼過ぎの話で、それからまだ半日程しか経っていない。
怪しむのは当然だと思わないかい?
ゴブリンが居るのは北の森、北の森はDランクパーティ推奨であり、Fランクの冒険者に気絶させられた君が行けるとは考えられない」
確かに。とケイトは思った。
さっきぶっ飛ばされて気を失っていたのだ。ゴブリン討伐に夢中になってすっかり忘れていた。
レンヴィルが言う様に、疑われるのも納得できる。
時魔法の事は言えないから言い訳を考えなければ。
「あれは、大勢が見ていたので話題になるのももめんどくさいなと思って」
「芝居を打って気絶したふりをしたと?」
俺の誤魔化しの言葉に、ニコリと笑ってレンヴィルはそう質問してきた。
なんかバレている気がするけど、このまま押し通すしかない。
「そうでなければゴブリンを倒してこれないでしょう?」
「そうだね。しかし、ランクを上げる為の不正行為も考えられる、買ってきたりとかね。
普通そんなに分かりやすく血塗れになる事もないから______」
俺はレンヴィルが言い終わる前に時を止めた。
もう色々と面倒くさくなってきた。
実力を理解させてゴブリンを倒せる事を理解して貰えばそれで解決なのだ。
ケイトは剣を抜いて、レンヴィルの正面、机を挟んで剣が届く距離まで移動すると、剣をレンヴィルの首筋に沿わせ、時を動かした。
「ね」
「…これでゴブリンを倒せたと納得してもらえますか?」
ケイトの言葉にレンヴィルは目を瞬かせた。
表情は段々と驚愕へと変わっていく。
そばで見ていたリーアも驚きで口を押さえている。
驚くのも当たり前だ。
ギルドマスターになる程の実力者に、動いた軌跡も、動作さえも気づかせずに死を感じさせる行動をしたのだから。
「血塗れなのは調子に乗りすぎたからですよ」
剣をしまいながら、そう捨て台詞を吐いた。
「…後で受付でギルドタグの更新をしてください。ギルドマスターの権限でランクを上げましょう。
リーア君、お願いしますね」
レンヴィルの額に汗が吹き出したのがわかった。
「は、はい、分かりました。
ゴブリンの報酬も振り込ませていただきます。
ケイトさんは報酬の受け取りは初めてですね。 報酬はギルドタグに振り込まれる事になります。
その後、必要な額を受付で現金化するか、ギルド内の酒場でしたらタグで直接払う事ができます。
酒場以外にも、宿屋などの冒険者がよく使う場所にはタグから直接お金を払う設備がある所もありますから、トラブルの防止の為にあまり多くのお金は持ち歩かない方がいいかと思います」
「へぇ、便利ですね。このタグ」
ケイトは首に下げたタグ状のタグをまじまじと見る。
「それではケイトさん、ギルドタグを更新の為に一旦お預かりします。
更新とゴブリンの査定、振り込みが終わりましたら受付にお呼びし出すので酒場などでお待ち下さい」
俺は冒険者タグを渡してレンヴィルとリーアにお辞儀をしてギルドマスター室を退室した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます