第2話気絶したら女神
俺の名前は
元々この世界の住民ではなく、先程この世界に召喚された。
しかし、ステータスを確認した所、無能だった為に城から追い出されてしまった。
しかし、謎にMPと魔攻が高い様だったが、やはり後から魔法を覚えるのは難しいのだろうか?
追い出されたのだからそうなのだろうな。
考えながら城からの一本道を歩いていると後ろから声がかけられ、呼び止められた。
城から城下町へと向かう一本道の途中である。後ろからの声ともなれば、城の関係者であろう。
振り返ると、先程王様の隣に並んでいた少年少女の中に居た少女が1人で走って来ていた。
動きやすそうな服に着替えたその少女は、俺の前まで来ると息一つ切らす事なく俺に話しかけてきた。
「私はユーリカと言います。
貴方を召喚したのは私なのです。
すみませんでした。 私の力が足りなかったから、貴方に勇者の力が宿らなかったのだと思います」
そう謝る少女、ユーリカの顔は申し訳なさそうで、先程の圭人を蔑んで見た貴族達とは違っていた。
先ほどの広間でも俺の事をこの様な顔で見ていたのだろうか?
この少女は只のいい人か? それとも何か意図があるのだろうか?
あの貴族達の態度を見た後では素直に信じる気にはなれなかった。
「私にできる事はこれくらいしかありませんが、これを受け取ってください」
そうして手渡された袋の中にはジャラッと銀貨が30枚程度入っていた。
「あまりに渡しすぎると力のない貴方では危ない目にあうかもしれません。
これだけあれば宿に二週間ほどは泊まれます
その後は、自分でなんとかしてもらうしかないのですが…」
手切れ金のつもりだろうか?
それとも本当に謝罪のつまりだろうか?
少女の真意を測りかねながらもとりあえず俺はその袋を受け取り、質問する。
「この世界でお金を稼ぐ方法はどう言ったものがありますか?
自分でなんとかするにも方法が分かりません」
とりあえずは、下手に出る事にした。この少女に怒りをぶつけた所で得などないのだから。
それに、これは俺にとっての最重要事項である。この貰った金が宿代だけで二週間ほどしかもたないのであれば、最低限の生活をする為にもお金を稼が無いといけない。
「お金を稼ぐ方法ですか? お店を出すには今渡したお金では無理でしょうし、雇ってもらう。もしくは冒険者でしょうか?」
「冒険者。それは初めて聞きますね、どうすればなれますか?」
やはり召喚された異世界には冒険者ギルドがある。これは異世界ファンタジーの基本である。
雇ってもらうのも一つの手ではあるが、冒険者というのは異世界ファンタジーに憧れるオタクとしてはやってみたい職業である。
かけだし冒険者用の採取クエストくらいはできるのではないだろうかと考えている。
ダメならばそれから仕事を探しても良い。
とりあえずは冒険者にチャレンジしてみよう。
「冒険者になるには冒険者ギルド。
城下町の東側ですが、あまりオススメはしません、貴方のステータスでは、その、死ぬだけかと」
俺はユーリカの辛辣な回答に苦笑いを浮かべて、お礼を言った。
聞きたい事はとりあえず聞けたので、ユーリカと別れて城下町へ向けて一本道を歩き出す。
とりあえずは先ほど聞いた冒険者ギルドへ行ってみる事にする。
自分が本で読んだ異世界ファンタジーと現実の違いにため息をつきながらトボトボと城下町の東側にある冒険者ギルドへと向かった。
冒険者ギルドは二階建ての建物だった。
この現代よりも進んでいない中世風の街並みは異世界ファンタジーである。
ドアを開けて冒険者ギルドに入ると、すぐ右側には軽い段差があり、一段下がった所に酒場。そして定番の昼間から酒を飲んでいる冒険者がチラホラといる。
半地下に行かずに少し真っ直ぐ進むと左側にクエストボードと思われる紙のはられた掲示板があり、そのまま奥に進むと受付や、ギルド職員が働いているスペースがある。2階には受付の隣から上がれる様だ。
とりあえずは受け付けへと向かう。
まず初めに冒険者として登録する必要があるだろうから説明を聞きにいく為である。
酒場の方から視線を感じるが、無用なトラブルに巻き込まれない為にも目をそちらに向けてはいけない。
これは昔、学生だった頃にヤンキーへの対処法として学んだことだ。
奴らは、目が合うと絡んでくる。怯えて目を合わさないと思えば馬鹿にして笑っているだけである。
なんとか絡まれずに空いている受付の前へたどり着くと受付のお姉さんが声をかけてくれた。
「今回は登録ですか? それともご依頼ですか?」
受付のお姉さんの質問に「登録をよろしくお願いします」と答える。
そして、冒険者登録に必要な手続きに入る。
ここまで来て、重要な事に気づいた。
スキルも何もなかったけど文字は読み書きできるのだろうか?
会話はできているけど、異世界ファンタジー定番の言語理解等のスキルは持っていない。
そんな事を気にしていたが、お姉さんの案内のまま、登録料の銀貨5枚を払う。
そして、針とタグが用意され、その針を使って血を一滴タグにたらした。
指先に針を刺す時にかなりビビったが、注射よりも少し痛い程度で、びびった事を少し後悔した。だってお姉さんにびびった姿を生優しい目で見られていただろうから。
ともあれ無事登録が完了した。
文字を書かなくても良かった事に少しホッとしつつタグを見る。
ケイト ランクH
名前はカタカナで苗字の記入はなかった。
その後は冒険者のランクや禁則事項。タグ紛失の時の
「ここはガキの遊び場じゃないぜ!」
声をかけて来たのはいかにもガラの悪そうな顎のしゃくれた男。
正直、このパターンで出てくるキャラはやられ役である。
ライトノベルならテンプレきた! と目をキラキラさせて読む所であるが、俺の能力は村人レベルの無能。
起こってほしくないテンプレート。俺のヤンキー回避スキルは役に立たなかったようだ。
とりあえず、へりくだってこの場をやり過ごすしかない。結局は元の世界と一緒なのだ。
「え、えっと、安全な採取クエストでもあればなー、なんて…ハハハ…」
苦笑いでそう話す俺に、しゃくれ男は獰猛な笑みを浮かべる。
「採取クエストだと? 街の外に出ればモンスターも居るんだ、大丈夫かどうか俺が見てやろう!」
男はそう言うと俺の腹に向けて拳を繰り出した。
男の拳は吸い込まれるように綺麗に俺の腹にめり込むと、俺の体は吹き飛び、ギルドの壁に叩きつけられ、床に倒れる様に落ちる。
酒場の方からは歓声とヤジが飛び、その音が耳にとどくまえに俺の意識は途切れていた。
白目を剥く圭人に男は「外に出て死ななくて良かったな! これは授業料として貰っとくぜ!」と声を掛け、先程ユーリカに貰ったお金の入った小袋を腰からむしり取っていったが、その声は俺に届く事は無かった。
___________________________________________
何処までも続く真っ白な空間で、圭人を呼ぶ声が聞こえた。
「やっと眠ったわね。初めまして泊圭人。
あら、かなりの男前じゃない!」
「寝たんじゃなくて気絶したんだけど。
それに、俺はモテたことも無ければ彼女がいた試しもないんだけど?」
「この世界なら結構モテると思うわよ?
なにせ私が管理する世界だもの。私の好みに近い感覚が多いわ。
それは良いとして、はじめまして。
だいたい予想はできると思うけど、この世界の神、女神フェルメロウよ。
今日は貴方に謝りに来たの。 ごめんなさい」
「謝りに?と言う事はチートスキルを渡すのを遅れた?
これからもらえるのか?」
「それは違うわ。間違えて貴方を召喚してしまった事によ。
本来召喚するのは貴方じゃなくて、近くを歩いていた中学生のカップルだったはずなんだけど手違いでね。
まさか貴方がカップルを追い抜いて転移魔法陣に入るとは思わないじゃない?」
俺はポカンと口を開けたまま固まった。
それは間抜けな顔をしていただろう。
あいつら中学生だったのか。ませやがって。
現実逃避でそんな事を考えていたが、それどころではない。
「いやいや、手違いってどう言うことだ?
俺の能力は村人レベルだけど魔法能力はずば抜けてただろ? 召喚による底上げで渡し忘れたチート魔法を渡しに来たとかじゃないのか?」
現実を受け止められない俺に、女神はとびきりの笑顔で答える。
「違うわよ? 貴方、体が若返ってる事には気がついてるわよね。それは体が本来召喚されるはずだった中学生の年齢に合わせて13歳になってるからよ。 鏡でもみる?
それと、貴方の魔法能力が高いのはね、ほら、貴方が元居た世界って30すぎてアレだとほら、魔法使いになる世界でしょ?
魔法がない世界だから実際には使えないだけで魔法使いにはなるから、それでよ。
能力が高いのは才能があったんでしょうね」
渡された鏡を見て若返っているのを確認する俺にフェルメロウの言葉が胸を抉る
どうせ俺は…この年になっても卒業できなかった…
「まって、そんなに落ち込まないで。
ほら、この世界ならモテると思うわ。言ったでしょ、私の感覚が似てる世界だからって、若返った訳だしあなたの人生はこれからよ! ね?」
膝から崩れ落ちて落ち込む俺に女神は慌てて声をかける。
たしかに若返った。そして女神の言う通りモテたとしよう。
そろでも、ステータス村人でモンスターやらがいる危険な世界に放り出されるのは勘弁願いたかった。
「あれ? オタクな貴方なら喜ぶかと思ったんだけど?」
「このステータスでこの世界に放り出されたら楽しむ前に死んでゲームオーバーだよ!
それなら元の世界の方がいい。モテなくてもいい。今までと同じ様に強い勇者をライトノベルで読むだけで、漫画やアニメを見るだけで満足するさ。元の世界に返してくれよ!」
「それは無理よ、元の世界の貴方が居た形跡は全て消したもの。だから貴方についてこんなに詳しくなった訳だし?
まあ確かに今のままじゃすぐ死んじゃうかもね、実際ワンパンで気絶したわけだし。
そうなったら私も後味悪いし、貴方の事タイプだからサービスして私の使ってない魔法あげるわ。
それとこれ、丈夫になるから死ぬ事は無くなるでしょ。
あとは、主人公にありがちな鑑定と
そう言って女神フェルメロウは笑顔で手を振っている。
俺が反論を言う前に俺の意識はこの白い空間から消えていった。
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「知らない天井だ」
一度は言ってみたいセリフを言って目を覚ました俺は起き上がってあたりを見回した。
医務室だろうか? 俺は簡素なベットに寝かされていて、隣にはベットがあと2つ。
そして、壁に向かって設置されている机を使って書類仕事をしているリーアがいた。
リーアは俺が起きた事に気づいていないようで仕事に集中している。
声をかける前に一般的な知識に習って、心の中でステータスと唱える。
ステータス ケイト
LV1
HP/E
MP/S
物攻/E
魔攻/S
物防/E
魔防/E
運/E
称号
異世界人
スキル
《時魔法》《鑑定》《収納》
本当にスキルが増えてる…時魔法か。
女神フェルメロウからもらった魔法が気になり、意識を時魔法に集中すると詳細が表示された。
《神の創世時の魔法の一つ。世界の時を止める魔法。時の止まった世界で自分だけが動く事ができる》
「これ、チート魔法だ」
俺のつぶやきにリーアが気づいて声をかけてくれる
「気づかれましたか。ケイトさん、具合のわるさはのこっていませんか?
綺麗に一撃で気絶されたので、気がつけば大丈夫だと思いますが。ヒールもかけましたし」
「大丈夫そうです、ありがとうございます」
他にも気になるスキルはあるが、とりあえず確認は後にしよう。
「いえ、それが仕事ですので。
それと、ケイトさんは冒険者登録してHランクですので一番簡単な採取クエストを受けることができます。
内容は薬草類ですけど、ケイトさんにはオススメしません。町の外には先程の冒険者が言っていた様にモンスターも居ますので、命の危険があります。
相手がFランクの冒険者とは言え一撃では無謀でしかありません。
ですのでギルドタグは財布と身分証代わりに使って町で仕事を探されてはいかがでしょうか?」
「一度試してみて無理そうならそれも考えます」
「まあ、10歳を越えれば自己責任ですからこれ以上言いませんが」
俺の言葉にリーアは苦笑いで、帰りは冒険者に絡まれない様に裏から帰してくれた。
多分、俺のような弱いかけだし冒険者が外へと出て死ぬのを見てきたから、そうならないように忠告してくれたのだと思う。
しかし、今の俺はさっきまでの俺とは違う。
チート魔法を手に物語の主人公の様な冒険を楽しむのだ!
これからの未来に心を踊らせ、モンスター求めて町の外へと向かった。
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