第2話 うる
入学早々、部活も何もせずにパパ活を始めた。それも仕方がない、ママも大変とここあは自分を納得させていた。母親には昔から彼氏がいる、ここあが知っている限りで今の彼は四人目だ。昔はそれでも毎日家に帰ってきてはいたが、ここあが高校に入学してからは家にいないことの方が多い。
そのころからここあへの要求は次第にエスカレートするようになった、家賃は出すから、他はすべて出せと言われた。足りない分は一応建て替える借しだと言われている。
来週には、何万か返さなければならない約束だ。返せないと、マジで殴られることになる。それが返すまで続く。それなのに一昨日から体調が悪く、何もできないはめになった、医者に行ったら、流行の感染症にかかっていた。どこでうつされたのかもわからない。頼みのパパ活もできなくなった。それさえできたら一回で三万にはなるのに。
母親に連絡したら、直るまでは帰らないってメールが来た。保護者が書類出してくれなきゃ食料の補助も何も来ない。お金がない、家に食べ物がない。お腹がすいた、頭もいたい、私このまま死んじゃうのかなあ。それもいいかぁ、なんかもう疲れた、ここあはすべてを放り出したくなった。
「サトシさんはどうしてそんなにここあにやさしいの」
ここあは聞いてみた。あの日突然に入ってきたDM、画像まとめて買うよ、そんな内容だった。いつもはもう少し慎重に動くここあだけれど、今回は飛びついてしまった。もう限界だった。動画二本で三千五百円です。そう返信を送るなり、アプリに入金があった。信じられなかった。初めての客は、たいてい写真が先だお金が先だというやり取りがある。それを飛ばして、サトシと名乗る客はお金を振り込んでくれた。
ここあはサトシに動画とお礼を送信するのと同時にウーバーを頼んだ。食べると元気が出てきた、せっかくの客だ、ここで逃がす手はなかった。他の動画もあるんですが、値段を提示したら、さっきと同じように入金してくれた。お金くれたらオナ電できますけど。ここあは次のステージに打って出た、きっと金持ちのスケベおやじだ、飛びついてくるに違いない。今家だから、奥さんがいるからそれは無理。常識的な答えだ、結婚しているなら危ないことはないだろう、久しぶりにいいお客を捕まえた。
次の日も別の動画はどうですかとメールしてみた。サトシの返事はもういらない、そんなものなしで、援助してあげるという返事が来た。そういうことかと思った、つまりはセフレになれということなんだ、とここあは理解した。急に吐き気が込み上げてきた。体を売る話がきまると、いつも吐き気が込み上げてくる。
ここあが初めて男と寝たのは、中学一年の時だ。漫画や友達同士の話でどんなことをするかは知っていた、はじめてに対する憧れや夢は興味と同じぐらいにあった。でもそんなものは無縁の初体験だった。
母親に売られたのだ、相手は彼女の友人だった。ここあはママの頼みだからと泣きそうな気持を殺して男に抱かれた。母親がいくらもらったのかは知らない。その日を皮切りに、二か月に一度くらいのペースで母親が連れてくる相手と寝た。今売っている動画も母親が撮ったものだ、しかもここあがいつも寝ているベッドで。いつもその日が来るとここあは吐いた。
それでも、ここあが男と寝た日の母親は優しく、五千円ほどの小遣いもくれた。それが嬉しいと思うほどにここあの感覚は狂っていた。その頃はまだ母親がここあの体で稼いでいることに気が付いていなかった。
「ママ、私の体いくらで売ってるの、五千円ってわけないよね」
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