親ガチャ でも生き抜いてやる
ひぐらし なく
第1話 どんぞこ
やっぱりダメかなあ、ここあはスマホを見ながら、ため息をついてしまった。このところフォロワーの数がまったく増えないどころか、目に見えて減っている。もちろん新たにフォロワーになってくれる人もいるけれど、その数倍の人にフォローを解除されている。
ほかの女の子のアカウントを見ているとここあとあまり変わりないような人のフォロワーがが、どんどん増えている。その理由がさっぱりわからない。
このままじゃなあ、と思い、今までで一番肌色の多い下着姿を乗っけたのが、一昨日。なのに全く鳴かず飛ばずで、『いいね』はちょこちょこつくけれど、コメントもリツイートもない。
ここあはインフルエンサーたちと違って、フォロワーの数を誇る気持なんかまったくない、どっちかというと、そんなことはどうでもいいって思っている。でもフォロワーがいなくては困る、切実な訳がここあにはある。
十八歳、LJK、いいねしてくれたら三秒でパイ凸、ラブリツしてくれたらマン凸、DMはフォローしてくれなきゃ返さない。そんな投稿を加工した顔とセットで載せれば、あほ面(想像だけど)したスケベ親父が集まってくれる。
当たり前だけど、ただでそんなものを送るわけはない。あくまで客集めの釣りだ。男たちだって当然わかっているはずなのに、懲りもせずに集まってくる。そんな世界にここあは身を置いている。
メッセージボックスには、そんな男たちの荒い息遣いさえ感じるような言葉の羅列が届く。自分の彼女や奥さんには言わない、そんな言葉を彼らは高校生の女の子に送りつけるのだ。
その一人一人に、ここあはメールを返していく彼らの目的はわかっている。屑だということも承知だ。だけどここあは、その中でもまだましそうな男を見つけなくちゃならない。言葉遣いや態度、相手はここあを小娘だと侮っているから、つい本音が現れてくる。
見極めに失敗して、痛い思いをしたこともある。それでも最近は、ほぼ間違いなく相手を選ぶことができるようになった。動画買ってもらえませんか、そこまで行くのにはそれなりの時間と手間がかかる。それでも実際にお金を払ってくれるのは十人に一人ぐらいだ。あまり効率の良い仕事とは言えない。だからこそフォロワーを確保したかった。
なのに、このところどんどん売れ行きが悪くなっている。それはそうだろう、ちょっと探せば、秘密の部分が丸出しになっているものや、性行為そのものの動画がネットにあふれている。しかも無料だ。ここあにとってはどいつもこいつも許しがたい商売敵だ。
ここあと同じようなことを考える人は多くてSNSの中には、JK、JC、さらにはJSと称する女の子(ほんとはどうかわからないけど)の、写真買ってくださいという投稿があふれている。毎日何度も投稿を繰り返さなければ、客はすぐに離れて行ってしまう。
ここあは今、切実に困っている。それもお金がないという、とても分かり易い理由で。遊ぶお金がないならば、遊ばなければいいだけだ。でもここあに必要なのは、高校の学費と生活費だ。なくていいという訳にはいかない。
ここあの家は父親がいない。小学一年の時に離婚して、ここあと母親は関西の地方都市から東京に引っ越した。田舎ではシングルマザーは食べていけないと思ったのか、もともと関東の人だからかもしれない。しかし東京でも生活は楽ではない。
高校に行きたいと言ったら、自分の金でいけと言われた。最初にかかった制服とか教科書代は出してくれた、と思ったら貸しだからという信じられない言葉が投げつけられた。
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