第54話 商会の前身

4日後 商会建設予定地


大工に任せていてほとんどが材料の状態だが、その置いてある材料の中に一際大きな家がある。俺が[創造]で作った建物だ。


「おお〜。よく来たね」

「使い心地はどう?マリー」

「問題はないさ。なんせ私の言った想像通りの研究室なんだからね」


学園が休みになり、マリーが卒業したときに研究室にあった必要なものをミクリルさんによってここに移してもらっている。


「で、住んでるの?」

「そうさ。…まぁ、住み始めたのは最近なんだ。盗賊はやっぱり怖くてね」

「ということは…」

「はい。私が来てからマリー様はここに住み始めました。私がここ、商会を建てる場所を監視しています。もちろん建てる材料も監視しています」

「クロカラさん。そこまで頼んでないんだけど…」

「主人の命令です」


マリーの研究室を移動させてしばらくした時、ウミラが転移魔法の魔導具を完成させた。その魔導具は急遽作ったウミラの部屋に置き、ウミラとクロカラさんがこっちに来れるようにしている。


「ウミラは?」

「主人は部屋で寝ています。叩き起こしましょうか?」

「いや、大丈夫だよ。どんな感じか見に来ただけだから」


ガチャ

「ただ今戻りました」

「フレルさん?なんか用事ありましたか?」

「買い出しです。マリーさんとミクリル、ウミラさんにクロカラさんもいるので頻繁に行っています」

「もちろんわたくしもです」


フレルさん、フレル・アナラストはミクリルさんの護衛として商会で働くことになった人なんだけど…


「なんでこの人達に買い出しを任せているのですか!」

「私は最初こと立場に驚いたのだが、遠慮しなくていいと言われたのでね。遠慮してないだけさ」

「まだ来たばかりで王都に慣れていないので…」

「うん。クロカラさんはいいよ」

「…この際主人に任せてみましょうか?主人も慣れなければいけません」

「それはウミラに相談して。で、マリー」

「何かね?」

「少しは遠慮してください」


「いえ、遠慮しなくて大丈夫ですよ。わたくし達はもう商会の一員なのですので。それに元々正式な立場はないのですよ?」

「そうは…」

いいんじゃないか?本人が言っているんだし。

「(でも、そこはしっかりしないと…)」

それに俺らも遠慮なしにマリーのものの移動のためにミクリルさんを使ったんだ。俺らは言えることはないよ。

「…」

「どうでしょうか?」

「分かりました。そう言ったからにはこっちは遠慮なく、こき使いますので」

「くれぐれも壊さぬように。わたくしはか弱い乙女ですので」

「勝手に抜け出して買い物をするほどの心を持ち、スキルや今まで受けてきた武器の扱いである程度戦いにも出れる人がか弱いかと言われると…」

「フレル!わたくしはあなたの思っている以上に弱いです」

「それは分かっていますよ」

「まあまあ。心配しなくとも壊したりはしません」


「じゃあ遠慮しなくていいってこといいかな?」

「買い出しの順番を決めて全員でやりましょう。料理が苦手ならクロカラさんに習ってください」

「ということは…?」

「はい!マリーは遠慮とか関係なく買い出しに行ってください」

「慈悲は?」

「ない」


====


「そういえば君は次の年で学園は最後だが、そのまま商会を作るのだろう?」

「そうですよ」

はどうするんだね?」

「彼女たち?アキリーナとサリナリのことですか?」

「そうだ。彼女たちとは親しいじゃないか。商会に誘わないのかい?」

「アキリーナたちを誘える強い訳がないから難しいね」

アキリーナの火属性魔法の研究は実家で出来るだろうし、サリナリを誘うとしたら傭兵としてだが本人の性格的に合わなそうだな。

「(そうだね)」


「そうか。まぁ、これから先どういう道に行こうとも最後の1年は楽しめ」

「マリーは楽しかったですか?」

「楽しかったさ!研究ができたからねぇ」

「やっぱり…」

「それだけじゃないさ。同じ歳の人と気兼ねなく話せる数少ない機会だからね。人の関わり合いも楽しめた。私が研究するだけを楽しむと思ってないか?」

「まぁ、良い研究が出来るということを売りにしてマリーを商会に誘ったので…。むしろ僕たち以外の人と関わりがあったんですね」

「ひどいなぁ」

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