第52話 のこした物

「なんだ!?これは?」

「不思議でしょ」

「(サクロウ、知らないの?)」

知らねぇ

「僕がクロカラを作ったときに使ったのはこれ」

と言ってウミラは移動し、1つの機械を指さした。

「…ここに人の皮の一部を入れて、この出っ張りを押し込むと透明な器に入った不思議な水が出てくる」

「出てきた不思議な水をこっちに入れて、欲しい人の部分を思いながら魔力を込めると思った通りのものがここから出てくる」


ウミラは2種類の機械の説明をするが、そのどちらも外装は白く無機質なものだ。

「魔力を使うってことは、クリスは魔導具を作れたのか?」

「たぶん違う。こっちに入っている魔導具は師匠が作ったもの。師匠から聞いたから間違いない」

「そうか…」

「ただ…」

とウミラは1冊のノートを机の引き出しから取り出した。

「ここに書いてあるかもしれない」

「それは?」

「たぶんクリスの書いたもの。ただ見たことのない言葉で書かれている」

「見せて」

「はい」


ウミラから渡されたノートの表紙には『DIARY』とで書いてあった。


「日記…」

「読める?」

「あぁ」

「(サクロウの使っている言葉?)」

いや、違うが少なくとも俺が知っている言葉だ。


ノートを開くと予想通り英語の文が書いてあった。


『ここで親しくなった友人にこの地下の空間を作ってもらった。その後にコンクリート製の部屋や普通の部屋、また上にある家から入れるようにエレベーターを作りこの地下室に住めるようにした』

『もちろんこの世界で仲良くなった友人にはこれらの構想を聞いて驚いていたが、深くは言わずに手伝ってくれた』

『地下室が出来上がるまで、手持ち無沙汰なのでこのノートにこの世界にない英語で様々なことを書こうと思う。年老いた私、忘れるなよ』


『最初に書いてから少し間が空いた。暇だから書いていただけだから暇じゃなくなったら書かなくなるのは当然か』

『最初に書き始めてから今日の間で、地下室が完成した。エレベーターがちゃんと作動するのは確認した』

『友人にはここのことを秘密にしてもらうことにした。ちなみに私からの提案ではなく友人からで、機械を作る材料も集めて持ってきてくれるそうだ。なんと気の利く友人だ』


そこからの内容は作る機械の話や友人との話かほとんどだった。ウミラの師匠カニュイマ・ヴィルが出てくるまで流し読みしていると…


『友人が子供を連れて来た。なんでも没落した貴族に助けてくれと言われたらしい。引き取るのもなんだか友人らしいというか…』

『カニュイマは持ってきた玩具で1人で遊んでいるようなおとなしい少年だった。そのカニュイマについて話があると友人と私の2人っきりで話すことになった』

『そこでカニュイマを引き取ってくれないかという相談を受けた。「俺もそう長くない、だけどカニュイマを1人にさせる訳にはいかない」と』

『引き取ることにした。これからは上で生活するようになりそうだ』


そこからはカニュイマとの生活やカニュイマが機械に興味を持ったことで色々教えているということが書かれていた。


『友人が死んだという知らせが友人の手紙と共に来た。友人は私より年上だから驚くことはなかった。カニュイマは少し悲しそうな顔をして「頑張る」の一言を手紙に告げて自分の部屋に戻っていった』


『昨日の手紙の影響か、はたまた機械を運ぶ人がいなくなったからしょうがなくやっているかは分からないが、機械、町ではからくりと呼ばれているものを積極的に売りにいくようになった』

『それに地下にある機械のことも以前よりも聞くようになった。やっぱり昨日の手紙の影響だろう』


しばらくページをめくると文字が書いてある最後であろうページにたどり着いた。


『もう先は長くはないだろう。機械で作った再生薬を飲んではいるが、もう無理な気がする。カニュイマを1人にしてしまうがそれを気にする歳でもないだろう。結局私には魔法の才能はなく、魔導具を作ることは出来なかった。魔導具を入れた機械を作りたかった』


「これで最後かな…!」

とページをめくると明らかに今までのページとは違い、走り書きがあった。


『英語を知っていたかこの文を解読した人。地下室の金庫に地下室に私が作った機械の説明書がある。鍵は「Another World」』


「…ウミラ。この地下室に開かない金庫はないか?」


====


「開かない金庫はないけど、師匠も分からないものがある。こっち」

ウミラに案内されたところには白をベースに黒いラインが入った大きな箱があった。


その箱の側面の一面が倒せるようになっており、倒すと倒した側面に張り付いたキーボードが出てきた。

「そこまでは師匠も見つけた。だけどそれをどう使うのかが分からなかった」

「これは…たぶん開けられるな」

キーボードにあるボタンのうち、ご丁寧に彫られている電源ボタンを押すとキーボードが出てきた側面の内側が薄く光った。キーボードの位置的にディスプレイだな。

試しに「Another World」と入力すると光っている面に同じ文字が浮かび上がった。


「文字?」

「これがこの箱の鍵。これで開くはず」

Enterキーを押すと箱から軽い「カチッ」という音が聞こえた。


「開いた」

「そうだな。…これどこから開けるんだ?」

「上じゃない?」

ウミラが上の面を開けると中にはそれなりの厚さの本が数冊出てきた。

「これは?」

「この地下にある部屋にあるものの使い方が書いてある。ここでは一番いいものじゃないか?」

「そうだね。師匠からある程度教えてもらったけど、何個かは知らなかったり一部分からなかったりしたから」

ペラペラ

「ただ、これ…読めるか?」

説明書は英語で書かれていた。

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