第51話 クリスの部屋

森に移動したが…

「あれ?どっちだっけ?」

近くにわかりやすい目印を置いておけばよかったな…。


俺のいた世界では森の中でも分かるような高い建物があったりして目印をつける必要が無かったから、目印をつける意識がなかった。


完全に俺の責任だな。覚えておけと言った俺も覚えてないし…。

「転移魔法を使ってここに来たし、そもそもどっちから来たかを覚える方が難しいよ」

転移魔法を使う時の今後の課題だな。どうやってシュテイルがある方向を見つける?

「僕が木に登って探すよ。何もなかったら少し移動して登る、を繰り返すから何かいい案が思い浮かんだら言って」

分かった。


結局、案が思い浮かぶ前にクリットがシュテイルを見つけて無事にシュテイルに入ることが出来た。


====


シュテイルに着き、真っ先にウミラのところに向かった。


コンコン

ガチャ「入って」

クロカラさんが来ると思ったら、ウミラが扉を開けた。


「あれ?クロカラさんは?」

「クロカラが買い物に行ってる。登録もしなきゃいけないし僕が上で待ってた」

登録?

「何の登録?今日ずっと僕を待っていたってことですか?」

「違う、ずっとじゃない。[共有]でクリットが来たのは見ていたからそれまでは地下にいた」

「便利ですね」

「うん」

「で、登録って?」


「地下の入り口の。登録しないと1人で入れない」

「…する意味あります?」

「ある。僕が商会に入るならここに来ることも増えるはず。なら1人で入れるようにしないと不便」

「そうですか。ならちゃっちゃとやっちゃいましょう」


登録は案外すぐに終わり、使い方も教えてもらった。

昨日のクロカラさんと同じように床と引き出しに手をつき、ほんの少し魔力を送ると床が消えて階段が現れた。

「大丈夫だね。ほとんど無い魔力で動くか心配だった」

「やっぱり魔力がこんなに少ないのは珍しいですか?」

「たぶんそう。でもいるだろうと思ってたから驚きはない」


====


そのまま地下に行き、昨日の居住スペースに来た。

「で、転移魔法の魔導具を作るためにここに来たんだよね?」

「そう。じゃあ交代するね」


「…じゃあ座って話そう」


「僕から質問。転移魔法を魔導具にするための質問。お前は転移魔法をどのようにして使っているの?」

「あらかじめ目印をつけて、魔法を使って目印の場所に移動している。目で見える場所なら目印をつけなくても移動出来るが、今は関係ないな」

「目印は何?」

「目に見えないものを置いている。この目印を作ることも含めて[創造]で転移魔法にしている」

「[創造]で作ったものでしか目印に出来ない?」

「他のものでも大丈夫。移動する場所がわかるようなものであれば何でも」

「わかった。じゃあ魔導具同士でしか移動できないようにしよう」

「ついでにどの魔導具に移動出来るのかを決めれるようにしてほしい」


「それをやるなら後。まずはここと商会を繋ぐのが先。今までの経験が活かせない魔法の魔導具だから時間はかなりかかる。どのぐらいで出来ればいい?」

「1年で出来ればいい。なんなら出来なくても俺が転移魔法を使ってここに来るだけだから」

「…それなら出来るだけ早く作る。報酬は?」

「…ここにあるもので分からないものはあるか?」

「ある」

「じゃあそれについての知識を報酬とする。報酬に出来なかったらかねだ」

「分かった。でもお金は少なくていい」

「いいのか?」

ほっしていないから」

「そうか。じゃあ代わりに…クリスの残したものはあるか?例えばとか」


「(人の皮?)」

「…ある。もしかしてクロカラを見て?」

「あぁ」

「じゃあ、案内する」


====


居住スペースのさらに奥にある数ある部屋の中の1つに案内された。


「ここがクリスの作ったものの多くがある部屋」

「ここが…。うん?どうした浮かない顔をして」

「この部屋のものは僕も使っているけど、本当に不思議なものしかない。お前でも分からないんじゃないかな?」

「それは見てみないと分からないだろう」

「そうだね。じゃあ開けるよ」


そうしてウミラは部屋の扉を開けた。


扉のその先には、クリットのいる世界の一般的な部屋のように木や少しの金属で出来ているものがあふれている訳でもなく、王宮の様に豪華な作りをしている品々がある訳でもない。俺のいた世界にあるような機械が並んでいるが、その機械は明らかに俺の時代よりも遙か先の技術が使われているようなものだった。

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