第49話 ウミラと転移魔法

「1つウミラについて質問いいかい?」

「大丈夫。あなたの名前は?」

「「お前」と呼んでくれ」

「分かった」

「で質問だが、「コーヒー」という言葉はどこで知った?」


コーヒーは俺がいたところでは一般に流通しているものだが、ここでは違う。一般に広まっている飲み物は紅茶や牛乳で、マリーが未知の飲み物としてクリットに出したようにコーヒーという言葉ははず。存在していたとしても生産地の付近だけで使われていて、そこまでに地上に出ないウミラが知っているのは少しおかしい。


ただ、そんなウミラにも知る方法はある。それは…

「直接コーヒーのことを知ったのは師匠からだけど、師匠も最初知らなくて師匠の師匠から聞いたって言ってた」

だろうな。

「そういえば師匠や師匠と師匠の名前は何?」

「師匠はカニュイマ・ヴィル。師匠の師匠が確か…何だっけ?クロカラ、知らない?」

「知りません」

「ちょっと待って」

とウミラはクリットが入ってきた扉とは別の扉を開けて何かを探しに行った。


しばらくすると…

「分かった」

「その本は?」

「師匠から貰った本。たぶん1つしか無い」

「へぇ」

「師匠の師匠の名前はクリス」

「クリスさんから聞いたのか…」

「お前も「コーヒー」を知ってる?」

「知っている」

「じゃあクリスはお前は同じように意識だけの存在?」

「それは知らん。そのクリスさんを直接見たり、会話をしたわけじゃないから」

「そう…」

「ただ、俺はクリスさんと同じことを知っている。例えばここを形作っている材料なんかもね」

「じゃあ、手入れして」

「え?」


「冗談。いくら知識があっても作った人が作った手入れの方法に従うのが一番」

「まぁ、そうだよな」

自己流で物を使うより説明書に従った方が物を壊しにくくなるようなもんだ。

「それよりなんで自分が有能なことを示そうとした?お前がクリスと同じことを知っていることは言う必要は無かったはず。…僕にからくりについて教えてもらうため?それなら最初にからくりを作った人を探している話も筋が通る」

「いや、からくりについて教えてもらうためにここに来たわけじゃあない」

「じゃあ、何のため?」

「俺の作る商会で働かないかと頼みに来たんだ」


「それは僕に得がない」

「…なんでそう言えるのかな?」

「商会ということはそこで働くなら商品を作るということになる。だけどすでに僕はからくりを作ってクロカラに届けてもらってお金を貰っている。なんなら商会で働くために移動しなければいけないのは僕にとって損。なぜならここは長年住んできた場所だから」

「つまりここに住むのを許可すれば商会で働いてくれるってことだな?」

「そうと言える」

「じゃあ…」

俺はウミラの正面の壁に移動してさっき[創造]で作った魔法を使う。


すると

「…消えました。クリットさんはどこに消えたのでしょうか?」

「魔法?僕に見せるということはスキルで作った魔法?」

「そう」

「「!?」」

俺はからウミラの疑問に答えた。

「…すきなところに移動出来る魔法?」

「そうだな。正しく言えば目印を付けた場所に移動出来る魔法だ」

ファンタジーでいう転移魔法だな。


「もしかして、ここを目印にする?」

「ここと商会のウミラに割り当てる場所を目印にすればいつでもウミラはここと商会を行ったり来たり出来る。この魔法を魔導具にすればね」

「なるほど。それなら僕が断る訳はお金だけになる」

「その辺も大丈夫だ。ここでからくりを売るのを商会に入った後も続けていい」

「…どんな手を使っても僕を商会に入れたいみたいだね」

が作れる人は貴重だからね」

「僕、そんなこと言った?」

「(確かにウミラはそんなこと言ってないよね?)」

「(あぁ)魔法を使わずに作ったのからくりに魔導具を入れているんだろ?クロカラなんか良い例だ。ただ作っただけで鉱石や木が考えを持つわけがない」


「凄いね。じゃあ、魔導具を作るために僕を商会に入れようとしたの?」

「もちろんからくりも含めてだ」

「…わかった。商会に入る」

「そうか。じゃあ目印を付けた場所に移動出来る魔法、転移魔法の魔導具を作るのがウミラの最初の仕事だ」

「もう?」

「いや、また改めて来る時に詳しく話すよ。他にやることがあるからね」

「分かった。クロカラも商会に入れるから」

「…私の仕事を増やす気ですか?」

「う~ん。それはとても困るなぁ」

クロカラは人扱い?からくりと同じく道具扱い?

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